失敗に寛容なシリコンバレー、不寛容な日本

 マイナスの失敗をプラスの機会とするしなやかな捉え方を、失敗許容力のある人は持っています。

 発明王トーマス・エジソンが、白熱電球の元となるフィラメント材料を探すための奮闘劇は有名です。適切な材料を見出すまでには大変な苦労を重ね、しまいには友人の髭まで実験材料として使ったのですが、すぐに燃え尽きてしまいました。

 悩んでいたエジソンの目にふと留まったのが、机の上に置いてあった竹の扇子だったのでした。その竹を使ったところ、200時間も灯り続けたのでした。 「私は失敗したことがない。うまくいかない1万通りのやり方を見出したのだ」という格言は、その体験に基づいています。

 しかしながら、失敗することは、確かに嫌なものです。

 私も失敗することが苦手で、失敗したときは、自分がまわりからどう見られているかが気になってしまいます。その背景には、失敗に寛容でない文化の影響を知らず知らずのうちに受けているのかもしれません。

 実際、日本は失敗に対して不寛容な国であると考えられます。失敗することは「社会的不名誉」であり、大きな失敗体験はその後の人生でもつきまとう悪評価になりかねません。

 一方で、米国は文化的にも失敗に対しての許容範囲が広いという印象があります。特に、シリコンバレーが他の都市と比べて際立っているのは、「建設的な失敗」の価値がより高く評価される、起業家を育む文化があるからだと考えられています。

 シリコンバレーに長く住むセニアさんもこう言っています。

「私は東海岸にある大学と西海岸にある教育機関の両方で学んだ経験がありますが、西海岸を代表するスタンフォード大学では、研究の失敗に対して、とても寛容だったように思います」

 スタンフォード大学の周辺には、たくさんのオープンカフェがあります。春から夏にかけての季節は、気温も穏やかで過ごしやすく、日照時間も午後9時頃まで日が続くほど長いため、多くの人たちがカフェに集い、おしゃべりに花を咲かせています。

 そこでは、シリコンバレーのスタートアップ企業で働く人たちやベンチャー企業に出資をしている投資家などが集まり、「自分は最近、こんな失敗をしてね」といった失敗談が交わされることも珍しくないそうです。

 スタンフォード大学を中心としたシリコンバレーの地域社会は、失敗に寛容なコミュニティ文化を育てているのです。