経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2017
【第67回】 2015年10月6日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

サンデル教授が主張する“これからの正義”とは何だったのか

【西垣通氏×武田隆氏対談2】

「無知のベール」をかぶれば、
リベラリストになる

武田隆(たけだ・たかし)
エイベック研究所代表取締役。日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を独自開発。その理論の中核には「心 あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回 る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜 千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。

武田 先ほどの新幹線のルートの例でいくと、もしかしたら海側のAルートのほうがたくさんの人が喜ぶかもしれないけれど、山奥に新幹線が通らないと命にかかわる人がいる場合、人数が少なかったとしても、その人たちの基本的人権を尊重しよう、と考えるわけですね。

西垣 はい。海側はもう拓けていて、すでに病院がたくさんある。でも病院がひとつもない山側にも、新幹線が通ることによって病院ができるかもしれない。そうしたら、これまで亡くなってしまっていた人も、助かるだろう。このように、集団全体の幸福ではなく、ひとりひとりのもっとも基本的な権利を優先させようというのが、リベラリズム。端的に言うと、弱い立場にいる人達を尊重して、格差をなくそうという考え方です。

武田 リベラリストのロールズは、「無知のベール」という考え方を提案しています。

西垣 人々が全員、自分がどういう存在か知らない「無知のベール」をかぶり、その上で公共のルールを考えたらどうなるか、という思考実験ですね。そのベールをかぶると、自分の宗教も、社会的地位も、職業も、学歴も、財産も、性別や体調、皮膚の色さえもわからなくなる。

武田 ベールを脱いだときに、自分は一番弱い少数派になっているかもしれない。だから、もっとも弱い人が尊重されるルールが選ばれるはずだというわけですね。

西垣 この「無知のベール」というのは、天才的なアイデアだと思います。しかしサンデル氏は、「負荷なき個人」なんてものは存在しない、人間は何らかの価値観を背負って生きていくのが前提なのだから、無知のベールはかぶれない、と批判した。そんな抽象的な人格を考えるのは、いわば空論ではないか、というのが有名なサンデルのロールズ批判です。

武田 そしてもうひとつの自由主義の正義が、個人と経済の自由を重んじるリバタリアニズム(自由至上主義)ですね。

西垣 はい。リバタリアンにとって正義というのは、市場を通じて財が安全に正しく配分され、その財を人々が自由にできることなんです。すべてを市場のメカニズムに任せようという考え方です。

武田 市場原理は平等に働くというわけですね。

西垣 そうです。ところが、お金持ちの家に生まれた人とそうでない人は、本当に平等なのかという議論があります。また、才能を持って生まれた人とそうでない人は平等かというのも同じです。

武田 市場の正義は、富めるものがさらに富むという状況を加速させてしまう気もしますね。

西垣 その通りです。功利主義も自由主義も完璧ではありませんね。

武田 いよいよ核心に迫ってきました。『これからの正義の話をしよう』を読んでいると、功利主義のいいところと問題点、自由平等主義と自由至上主義のいいところと問題点と話が進んで、最後に共同体主義の説明が来ますよね。あの構成だと、結局「共同体主義がいい」という結論に行き着きます。



武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部在学中の1996年、前身となるエイベック研究所を創業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発し、複数の特許を取得。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。これまでに森永乳業、ライオン、資生堂ジャパンをはじめ、300社超のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。また、CSR活動の一環としてJFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティも務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


ソーシャルメディア進化論2017

花王、ベネッセ、カゴメ、レナウン、ユーキャンはじめ約300社の支援実績を誇るソーシャルメディア・マーケティングの第一人者、クオンの代表取締役 武田隆氏が、ダイナミックに進化し続けるソーシャルメディアの現在と未来に独自の視点から迫る!

「ソーシャルメディア進化論2017」

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