世界的な不況とそれに続くデフレにより、現在日本では、不動産価格の下落ぶりが著しい。一口に不動産と言っても、個人のマイホームから企業が事業や投資に使うものまで用途はまちまちだが、今回は「企業が保有する不動産」についてお話ししよう。

 資産デフレに追い討ちをかけるように、ビジネスで多くの不動産を取り扱う企業関係者に、今まさに大きなインパクトが訪れようとしている。

 それは、2015年、または2016年から上場企業への強制適用が始まるIFRS(国際会計基準)において、不動産の資産価値評価がさらに厳格化されることだ。

 よく指摘されるように、企業が抱える不動産には、用途や価値が不透明なものが意外と多いものだ。関係者自身が、「自社にとって本当に必要なものなのか」をよく吟味しないまま購入したり、保有し続けている土地や建物は少なくない。

 その理由の1つとして、これまで日本の企業会計では、保有する不動産を取得時の原価(簿価)で評価する「取得原価主義」が一般的だったことが挙げられる。そのため、「本業の利益などと比べて、不動産の公正な価値はあまり重視されてこなかった」というイメージが強い。

「公正価値」開示の流れがさらに加速!
デフレと会計基準変更にどう対応するか

 だが、「土地神話」が崩壊したバブル期以降、企業が保有する不動産の価値を取得時の原価で判断することは困難になった。そのため2005年度からは、企業会計原則の見直しが行なわれ、投資用不動産への「時価評価」の導入が進められている。

 この流れをさらに加速させる可能性が高いのが、他ならぬIFRSの強制適用だ。より適正な資産評価の開示が義務付けられるため、「自社の不動産が利益を抱えているのか、それとも損失を抱えているのか」が、はっきりわかるようになる。資産デフレという、いかんともし難い経済の荒波に晒される一方で、会計基準の厳格化まで始まるわけだから、確かに企業の負担は小さくなかろう。

 不動産会社、卸売業者、鉄道会社など、ビジネスで多くの土地や建物を扱う企業や、「本業は振るわないけど不動産の賃貸収入で乗り切っている」といった「不動産頼みの企業」は、要注意だ。“虎の子”とも言うべき大切な資産の「真の価値」を見極めるためにも、評価の正しい知識やノウハウを、今から身につけておくべきである。