「自分で決めた感」を内定時期に確立する

 内定時期のデザインを題材にワークショップを開催したことがあります。

 経営学習研究所sMALLラボ が主宰した「内定時期というトランジションを考える」という企画です。

 各界の7人の方からショートプレゼンテーションをいただきましたが、その中から大学側からの指摘を3つご紹介します。

 まずは、大学の職員の方からうかがった、この時期の一部の学生の心理についての話です。

 内定を得てしばらく経った学生から「こんな自分で社会に通用するのでしょうか?」という相談がよく寄せられるそうです。

 たぶん、ふと怖くなるのでしょう。この時期は、企業側も採用モードから入社モードへ対応のスタンスを変えています。お客様扱いを少しずつやめ、リアリティ・ショックを低減させるために、厳しい話をする機会も増えていることでしょう。

 そこそこ優秀な学生ほど、「決められた通りにきちんとやっていればいい教室生活」を送っているもの。

 予測困難、答えがない、弱肉強食、混沌、曖昧、理不尽といったキーワードがちりばめられた社会で、はたして自分が通用するのか、不安になってくるのもうなずけます。

 ただ、変化・過渡期に対する不安は健全なものですので、きちんと受け止めてあげる必要があります。

 さまざまな不安を乗り越える原動力の1つは、就職活動における「自分で決めた感」でしょう。

 後付けでもいいのです。第一志望でなくても、一つしか取れなかった内定先であっても、「自分で決めた感」を持つことはできます。

「自分で決めた感」には多少の不安であれば払拭させるだけの力があります。入社後、困難にぶちあたった時も、自分に逃げ道を与えることなく、そこで頑張り続ける原動力になります。

内定時期に「自分で決めた感」を確立させることが大切です。

 2つめの話は、内定時期だからこそ期待できる学びについて。

 大学生は就職活動の中で大きな成長を遂げます。ある大学の先生は、就職活動をするうちに「時間を守る」「他者を気遣う」「後輩のために働こうとする」「人前で話す内容・態度がしっかりする」といった、目に見える変化が実感できると指摘されました。

「内定時期は進路決定後のおまけではない」という表現をされていたのが、とても印象的でした。

どうすれば大学生活の中で成長機会を得られるようになるか、という点も考えたいものです。

 先にあげたような学びは、就職活動以前後の大学生活からも得られるはずです。この点について、企業側が大学と連携できる場所はまだまだあるように思います。