F1にマネジメントを学ぶ

 カルテンボーンは真顔になって言った。

「その質問に答えるのは簡単ではありません。ドライバーを信頼すること、そしてドライバーから可能な限り詳細な情報をもらうことが必要です──たとえ彼がストレスにさらされながら時速200マイル(約320キロ)でトラックを周回しているのだとしても。

次いで、チームは一丸となり、もっと深いレベルのデータを探します。もしかしたら、マシンがごくわずかにアンバランスなサスペンション調整を必要としているのかもしれない。トラックの温度が上がって、タイヤかウィングに影響が出ているのかもしれない。誰もが互いを信頼しなければなりません」

テクノロジーを信頼し、データをとって分析する

 しかし、そうしたことをすべて実行してなお、ザウバーは、人間であるドライバーと──パフォーマンスの諸要素の一つとして絶対に欠くことのできない、ハンドルを握る、欠点のある人間と言い争うことになる

 ドライバーとは、私たちのことでもある。

どんな会社も、不完全な人間が、それでもなお責任を負っているという事実を、不完全な人間は、センサーやコンピュータや分析ソフトが合理的で一貫しているのと同様には、必ずしも合理的で一貫しているわけではないという事実を回避することはできない。そんな人間の多くは、「ゾーン」に入っているときに最高の仕事をする傾向がある

 しかし、データ主導の世界においてこれは何を意味するのだろう。それはつまり、スペシャライズド社で主任設計者を務めるエッガーの言葉にあるように、人間的真実とデータが示す真実との間にある、見つけるのが難しいスイートスポット」を探さなければならないということである。