大手百貨店の2009年度決算が相次いで発表された。百貨店事業で100億円の営業利益を超えたのは、早くから構造改革とマーケット対応に取り組んだJ.フロント リテイリングのみだった。改革の進捗度合いで、早くも業績に差がついた格好だ。経営者の危機意識とリーダーシップが改革スピードに表れている。

構造改革スピードで業績格差<br />問われる百貨店経営者の力量セブン&アイは、不動産証券化されている西武池袋本店を約1100億円で買い取ることにした。旗艦店へ資金・人材を集中する一方で不採算店の閉鎖は加速している
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 セブン&アイ・ホールディングスは、百貨店事業の旗艦店である西武池袋本店を約1100億円で買い取ることを決めた。

 池袋本店は、2000年に民事再生法を適用した西武百貨店が資金調達の一環として、当時1081億円で証券化した。そのため、賃料を毎年数十億円支払っており、この「キャッシュの外部流出を防ぐ」(氏家忠彦・セブン&アイ取締役最高財務責任者)のが今回の買い取りの目的だ。

 池袋本店は、同グループの百貨店事業の利益の大半を稼ぎ出す旗艦店。建物取得に加えて、傘下のそごう・西武は300億円をかけて耐震補強や改装を進め、バイヤーは21人増やした。

 セブン&アイは、旗艦店に資金・人材共に集中する一方で、複数の不採算店の閉鎖を決めた。

 昨年、そごう心斎橋本店を売却したほか、西武札幌店を閉鎖、今年12月には西武有楽町店を閉鎖することを決定している。さらに、今後も地方店について、「都市の中で競争力がない店舗は、閉鎖を検討する」(村田紀敏・セブン&アイ社長)。

 百貨店のリストラが、ようやく動き始めた。

売上高減に底打ち感も2年前の85%の水準

 今年3月、百貨店市場に薄明かりが差しているという見方が広がった。大手百貨店各社の3月の売上高は前年同月比2~5%減。リーマンショックの影響が出た08年末以降、大手百貨店は売上高を毎月10%近く落としており、下げ止まりを感じさせる数字だった。

 しかし、売上高の減少は2巡目に入っている。昨年3月には、各社13~14%落としており、2年前に比べれば、じつに15~17%も売上高を落としていることになる。

 

構造改革スピードで業績格差<br />問われる百貨店経営者の力量

 日本百貨店協会によると、09年の全国百貨店の売上高は6兆5842億円、この2年で1兆1210億円の市場が消えた。長期的に見ても、この10年間で市場規模が前年を上回ったことは一度もない。対して、売り場面積は減っておらず、百貨店は明らかにオーバーストア状態にある。

「大都市部では売上高1、2番店、地方では1番店しか生き残れない」(小売りやアパレル企業のコンサルティングを行う、オチマーケティングオフィス代表の生地雅之氏)という見方は業界では有力で、競争力のない店舗は、この先も閉鎖に追い込まれるのは必至だ。