8月中旬以降、米国利上げ懸念と中国をはじめとする新興国の一段の動揺がトリガーとなって金融システムの緊張が高まった。FRB(米連邦準備制度理事会)の9月利上げ見送りは、利上げ時期をめぐる“不透明感”と米国経済への“懸念”をかえって煽ってしまったようである。

 しかし、FRBがリスクに配慮したことを過度に悲観する必要はない。FRBが市場と懸念を共有したことは投資家にとって安心である。金融市場が落ち着き、堅調な雇用創出が確認され、インフレ見通しに確信が持てれば利上げを実施するというFRBの政策プロセスは透明になった。

 残されたのは米国経済への懸念だ。中国が世界第2位の経済大国とはいっても、GDPの約4割を占める輸出は米国をはじめとする先進国の最終消費向けの衣類・靴・雑貨類などだ。世界経済に対して巨大な最終消費を生み出していない新興国景気が落ち込んでも、巨大な最終消費を生み出している米国景気への影響は限定的だ。

 1990年代後半に世界第2位の経済大国であった日本がマイナス成長に陥ったが、米国経済は高成長を続けた。中国景気の落ち込みや金融市場が混乱した8月中旬以降の経済指標で、米国景気の底堅さが確認されれば過度な懸念は和らいでいくだろう。

 国内では安倍政権の経済回帰が鮮明になっていくとみる。具体的には(1)10月からの運用一元化による共済組合の運用見直し加速、(2)ゆうちょ銀行・かんぽ生命の運用積極化、(3)補正予算・経済対策への期待、(4)日本銀行の追加金融緩和への期待、(5)ゆうちょ銀行・かんぽ生命の限度額・業務制限の規制緩和機運の高まりなどだ。