ほとんどのフレームワークは「不完全」である

この例からわかるとおり、いわゆるビジネス理論として紹介されているほとんどのフレームワークの本質は「チェックリスト」である。
このフレーム(境界線)に沿って問題や課題をMECEにツリー分解していけば、原因や解決策を見落とす可能性を減らせるというわけだ。

この論点は意外と注目されていない。フレームワークはただ枠を埋めて事象を整理するためのものではない。発想のモレを防ぎ、より発想を広げるためのツールなのである。

ただ、注意しなければならないことが2つある。
1つは、このフレームワークは絶対的なものではないということだ。人によって見落としポイントの入り方は違う。誰にとっても、このフレームの分け方が見落としの回避につながるとは限らないのだ。

学びが得意な優等生タイプの人ほど、「マーケティングはこのフレームに沿って考えるんだ」と教えられた途端に、それを妄信し枠を埋めることに一生懸命になってしまうので、注意が必要である。

もう1つの注意点は、これらのフレームワークのほとんどが、事象を「最上流」で分解するものでしかないということだ。
優れたチェックリストの条件は「できる限り具体的であること」である。その意味では、こうしたフレームワークは、まったく具体的ではない。具体的なアイデアまでにはかなりの距離があり、直感のジャンプをするには、橋として短すぎるのだ。

4Pにしたがって対象を4つに分けたとしても、それだけをチェックリストにして直感に頼るのは危険である。そこからさらにMECEに分解を進め、もうこれ以上分けられないというところまで来てから、直感によるジャンプを試みるべきだろう。

したがって、どんなビジネスフレームも「万能なお手軽ツール」というわけではない。むしろ、確実性においても、具体性においても、不完全なものである。
論理思考の力があって初めて、フレームワークは有効に機能するということは、肝に銘じておくべきだろう。

(第16回に続く)