中国 2015年10月9日

「中国・抗日戦勝記念イベント」に
中国市民の反応は?
中国・プロパガンダの難しい時代

2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、そして08年からは上海に在住。情報誌の編集長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋さんの中国レポート。日本でも大きく報道された9月3日の抗日戦勝70周年軍事パレード。この時期、在中日本人たちは複雑な気持ちで過ごすという。盛大に行なわれたパレードの意味するものは?

 柳条湖事件のあった9月18日、翌19日の防空警報のテストが終わると、27日の「中秋節」、10月1日の「国慶節」と中国は連休モード。在中日本人にとっての憂鬱な季節がようやく終わった。

ガラガラの戦勝70周年特別展

 戦後70周年の今年、中国では抗日戦勝70周年ということで、各地でさまざまなイベントが行なわれた。その最たるものは、日本でも大きく報じられた9月3日の軍事パレードで、9月3~5日は祝日となった(6日の日曜日は振替出勤)。

軍事パレードのあった9月3日前後は、街のあちらこちらで「戦勝70周年記念」の文字を目にした【撮影/大橋史彦】

 祝日の理由が理由なだけに、複雑な思いを抱いた日系企業も多かったようだ。ある日系企業のホームページでは、休業のお知らせをするにあたって「戦勝記念」という言葉を使用せず、「休業」としか記載していなかったし、なかには出勤する日本人もいた。

 私も取材のアポイントが入り、4日にある企業を訪問したが、日本人社長がひとりで仕事をしていた。同行したフリーペーパーを発行している社長も、「われわれ日本人には(祝日は)関係ないからね」とつぶやいていた。

 中国人にとってもお祝いムード一色というわけではなかった。9月1~5日のあいだ、主要キー局ではバラエティ番組の放映が禁止された。それにはドラマも含まれるが、抗日ドラマだけはOKという偏ったものだった。連休でありながら好きなテレビ番組を見ることができず、若者からは不満の声が多かった。ネットでは、「まるで喪に服しているようだ」と書き込む中国人もいた。

 軍事パレードは、世界に強大な中国をアピールするという側面もあるが、国民に威厳を示すという意味においても重要だっただろう。そのためのバラエティ禁止だったのではあるまいか。それは、中国共産党の持つある種の危機感の表れのようにも思える。

 インターネットの普及により、一部規制はあるにしても、中国人も多くの海外情報を得られるようになった。ポップカルチャーを中心に、さまざまな文化が流入。日本の文化が好きないわゆる「親日派」も若者を中心に増えてきた。情報が増えたことによって、共産党が進めるプロバガンダが機能しにくくなってきているのだ。

 たとえば私の妻は、私が抗日関係の施設や展示を見に行こうとすると、館内に入るのを嫌がり外で待っている。本人は「興味がない」としかいわないが、日本や日本人に嫌悪感を抱いてしまうことを恐れているのかもしれない。もちろん、日本文化の好きな中国人がすべてこうだというわけではないが、昔と比べ、情報を取捨選択しやすい時代になったことは確かだろう。

 先日、湖北省武漢市を訪れた際、時間が空いたので、博物館に立ち寄った。すると、たまたま抗日戦勝70周年特別展をやっていたのでのぞいてみた。中国の博物館は入場が無料。その日が日曜日だったせいもあり、館内はそれなりに混んでいたのだが、1階でやっていた特別展は閑散としていた。

 こうした抗日の催しは各地で行なわれており、民衆の反応に地域差はあるだろうが、そうした展示に興味を感じない層が存在するのは間違いないだろう。展示物のなかに、当時の日中の軍事力を比較したデータがあった。それを見ていた中国人は、「これでは日本に勝てるわけがない」と苦笑していた。

武漢博物館では、抗日戦勝70周年の特別展が開催されていた【撮影/大橋史彦】
抗日戦勝特別展は、驚くほど閑散としていた【撮影/大橋史彦】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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