アラブ 2015年10月13日

教えて! 尚子先生
エルサレムに複数の宗教の聖地が集まっているのはなぜですか?【中東・イスラム初級講座・第27回】

イスラム教、キリスト教、ユダヤ教という3大宗教の「聖地」となっているイスラエルのエルサレム。なぜ、複数の宗教が同じところを聖地としているのか? そしてなぜ彼らは争うのか? 中東研究家の尚子先生がわかりやすく解説します。

 エルサレムがユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3大一神教の聖地であることはよく知られていますが、なぜ聖地なの?と尋ねられると、正確に答えられる人はひじょうに少ないでしょう。今回はエルサレムの複雑な歴史を簡単に説明しつつ、宗教の難しさを考えてみたいと思います。

イスラエルの首都になれないエルサレム

 イスラエルが建国されることとなった第一次中東戦争(1948~49年)の際の休戦協定によって、エルサレムはアラブ人地区の東エルサレム(ヨルダン領、1967年まで)と、イスラエルが占領した西エルサレムに分断されました。そして、イスラエルは1950年、エルサレムを首都として宣言します。これにはアラブ側だけでなく多くの国が反発し、この宣言は国連においても認められませんでした。

 イスラエル議会は1980年に、第三次中東戦争(1967年)におけるアラブ側の敗北によって、東西を統一したエルサレムを、あらためて「永遠の首都」として制定しました。しかし、この決定によって大使館や領事館を移動させた国はありませんでした。

 つまり、現在にいたるまで、エルサレムはイスラエルの首都として認められてはいません。これは各国の大使館や領事館がエルサレムではなく、テルアビブにおかれていることからも明らかです。最強の後ろ盾であるアメリカですら、いまだに大使館をテルアビブにおいているほどです。

 エルサレムにはおそらくユダヤ教徒やイスラム教徒にだけでなく、キリスト教徒にとっても特別な思い入れがあるため、首都として認められないという原則が貫かれているのだとも考えられます。

4つのエリアに分かれるエルサレム旧市街地

 ところで、「聖地」エルサレムという場合、通常、エルサレム市全体のことではなく、わずか1キロメートル四方を城壁で囲まれた、旧市街付近を意味していると考えた方がよいでしょう。

 旧市街はユダヤ人地区、イスラム教徒(アラブ人)地区、アルメニア人地区、キリスト教徒地区の4つに分かれています(アルメニア人は最初にキリスト教を国教<301年>とした民族で、そののちにイエスが神であるか人であるかという論争において、カトリックやギリシャ正教徒と袂を分かちました)。

 キリスト教徒とイスラム教徒の地区は、お土産物屋や安宿でにぎわっていますが(まるで「浅草」のようだと例えた旅行者もいるほどです)、アルメニア人地区とユダヤ人地区はひっそりと静かです。

 物価はアラブ人地区がユダヤ人地区にくらべ、5~10分の1程度になっており、同じ町の中でもまったく違ったムードを漂わせています。物価がこれほどまでに違うのは、アラブ人地区の人々がイスラエル政府への税金の支払いをボイコットしているためです。その代償として、アラブ人地区は都市整備を受けられていないため、ムードだけではなく、町自体のつくりそのものが異なっています。

旧市街地にあるダビデの塔の前には多くのユダヤ教徒が行きかう (Photo:©Alt Invest Com)
アラブ人地区には日常雑貨を扱う商店が並ぶ (Photo:©Alt Invest Com)

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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