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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

究極のセキュリティは生物学から生まれる!?
”ジャンプ発想”でイノベーションを起こせ!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第17回】 2015年10月19日
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サイバーセキュリティ対策に
「受精卵の機能」が応用できる!?

 サイバーセキュリティと生物学についてもう少しお話しましょう。

 私たちは今、当たり前のように“お金”を使っていますが、これって経済発展に欠かせない、すごい発明品なのです。例えば、私が持っている1万円札を誰かに渡すと、1万円札は私から物理的に離れ、1万円の価値もその人に移ります。でも、これをビッドコインのようなデジタルカレンシーでやろうとすると非常に難しい。「データを送信する」ことと、「価値を受け渡す」ことを連動させるのが非常に難しいのです。ハッカーの格好の標的になってしまうからです。

 この対策を生物学的に考えてみましょう。すると、「卵子の機能」が応用できるかもしれないことに気がつきます。ご存じのように、卵子と精子が結合して受精卵が誕生しますが、このとき数億個の中から1個の精子のみが受精できるという仕組みになっています。そして受精すると、卵子の表面の性質が変わり、他の精子はシャットアウトする。1個の精子だけが守られる仕組みになっています。

 じつは、サイバーセキュリティにおいては、1回だけは受け入れ、その後は入れないようにするという機能を持たせることが意外と難しいのです。これについて、精子を1つしか入れない卵子の性質を分析してロジックに落としたら、うまくいくかもしれません。必要な情報を送りたいときにだけ許可し、1つ受信すると同時に通信を遮断するような仕組みができれば、デジタルカレンシーも確実に受け渡すことができそうです。

 生物学とサイバーセキュリティという、一見無関係そうに見えるこの2つがうまく結びつけば、これまでなかったようなアイデアが生まれる可能性は大いにあると思います。興味のある方は、ぜひ研究してみてください。

日本の最も大きな課題は
「超高齢社会への対応」

 一方、前述したビジネスモデルに関していうと、日本の企業はもっとイノベーティブであるべきです。日本にもアマゾンのような企業はありますが、それは模倣の域を出ません。

 例えば、在庫を持たないアリババ・グループのECサイトは、常識にとらわれない非常にイノベーティブなビジネスモデルだと思います。こうしたアマゾンを飛び越えるようなビジネスモデルは、どのようにして生まれたのでしょうか。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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