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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

究極のセキュリティは生物学から生まれる!?
”ジャンプ発想”でイノベーションを起こせ!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第17回】 2015年10月19日
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 その背景には、中国という国の社会環境があります。中国では、通販で商品を購入する時、お金を支払っても商品が届かなかったり不良品だったり、逆に商品を届けてもお金が支払われないといったトラブルが横行していました。

 そこでアリババが考えたのが、電子マネーを使った取引方法です。消費者はいったんアリババにマネーを預け、商品を受け取ってから買うかどうかを決めます。買う場合はアリババから販売会社にマネーを移動し、キャンセルなら送料を引いた残りのマネーを消費者に戻すというシステムを構築し、課題を解決しました。

 このイノベーティブなビジネスモデルが誕生した背景には、社会が抱えていた課題があったというわけです。

 では、日本の場合、どんな課題に対してイノベーションを考えるべきでしょうか。

 その最たるものが「超高齢社会への対応」です。内閣府が発表した「高齢社会白書(2015年版)」によると2014年10月1日現在、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は26.0%(前年25.1%)。今後も高齢化率は上昇し続け、2060年には39.9%に達し、65歳以上は2.5人に1人、75歳以上は4人に1人になる見通しです。

 これからの日本は、超高齢社会に対応した様々なサービスをつくりあげていかなければなりません。もちろん簡単でありませんが、そこには無数のビジネスチャンスがあるでしょう。さらに、日本は世界に先駆けて超高齢社会に遭遇するのですから、次なる輸出産業を育てるチャンスでもあるのです。

重要なのは、技術を組み合わせて
システム化する発想

 高齢社会に対応したビジネスでは、IoTやパワーアシストロボットの技術などが注目されていますが、重要なのはそれらを組み合わせてシステム化する発想です。

 私は数年前、子供が生まれた時に、いくつかのセンサーを組み合わせて子供の状態を管理する「IoTベッド」のようなものを作りました。

 ベビーベッドに10数個のカメラやセンサーを取り付けて、育児に役立てることができないか模索しました。もちろん、まだIoT機器は今ほど揃っていませんから、秋葉原でセンサーを買ってきてPCと接続するような、手作り「IoT」のベビーベッドです。

 ベッドのまわりは配線だらけ。ベッドの下にはたくさんのコンピューターが置かれていて、冬でもほんわかと温かい。もちろん、センサーやコンピューターは暖房のために取り付けたのではありません。ベットにいる娘の表情、音声や動き、ベットの温度や湿度、布団の重さを記録していました。

 こうしたシステムも、今ならもっとスマートに実現することができるでしょう。

 まだ世界の誰も処方箋を見つけることができていない「超高齢社会への対応」。この大きな課題を解決するには、冒頭で紹介したビジネスモデルのように、既存の法律や規制、常識から「ジャンプする発想」が大切です。80年代に画期的なアイデアで世界を驚かせたように、日本企業は世界の先頭に立ってイノベーションを起こすべき。今がまさにその時なのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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