日本でもベストセラーになったクリス・アンダーソンの『FREE』。その中では、インターネットを中心とするデジタルの世界では、商品・サービスの提供コストがゼロに近づく「無料化」が進むと指摘されている。

 そんな時代にIT企業が生き残るためには、「無料」というエサでできるだけ多くの消費者を釣り、その中の一部の消費者に「有料」の商品・サービスを購入してもらうことで、ビジネスを成り立たせる「FREE戦略」をとる必要がある。デフレが進む日本では、特にこの「無料」というキーワードがかなり刺さっているようだ。

 ただし、このFREE戦略は、実は日本以上に中国で有効に機能する可能性が高い。一般的に中国人は、庶民から富裕層まで、購入する商品・サービスの「価値」と「価格」のバランスにかなりうるさい。

 そんなカネにうるさい中国人向けのビジネスにおいては、「無料」というキーワードが日本人以上に“刺さる”からだ。

日本よりも「FREE」化が進む中国
無料でお客を誘い込む悪徳美容室も

 たとえば、中国でも快進撃を続けている化粧品販売のDHC。中国参入当初は、中国市場での認知度がほぼゼロからのスタートだったが、「無料サンプル」の配布などで一気に知名度を上げ、収益も急成長を続けている。

 現在、中国のC2Cサイトで圧倒的なシェアを持つ淘宝網(タオバオ)も「FREE戦略」で成功した。サービス開始当初は、競合の易趣網(eBay)にかなり先行されていたが、「利用料金無料」を旗印にして、あっと言う間に易趣網(eBay)を抜き去ることに成功した(今では、易趣網(eBay)も利用料金を無料にしている)。

 これらの例からもわかるように、中国ビジネス、特に消費者向けビジネスにおいては、FREE戦略が有効に機能する。逆に、中国人の「無料」好きを逆手にとり、騙す輩もいるくらいだ。

 たとえば、「悪徳美容室」の例が挙げられる。無料でキレイな髪形にするという誘い文句で客を呼び込み、実際にはそのままでは帰れないようなひどい髪型にして、「まともな髪形にして欲しければカネを払え」というヒドイ手口で消費者を騙す悪い美容室もある。