核による世界秩序を崩さない動き

秋山 まあ、僕がというより、日本の企業が、ということなのでしょう。
 今から考えると、日ソ友好をアメリカが後押しすることがあったのです。
 北方領土が1島1兆円で返還されるという不思議な話が出てきたり、アーマコスト駐日大使が日本企業のロシア進出を後押ししていたり……。
 そうした中でTBSに宇宙特派員を送るという話が出てきたのです。1988年の秋でした。ソビエトのスペースシャトル計画(ブラン計画)をすべて取材させるという話があり、TBSが独占契約を結んだのです。

広瀬 秋山さんが、米ソの密約の中にあったというのは、そういう話だったのですか。

秋山 現実に密約があったのかどうかわかりません。あくまで僕の推測です。
 しかし、話としては筋が通っているのです。TBSの後には、オーストリア人がロシアで訓練を受けることになり、次に西ドイツ人が続きました。

「有人宇宙飛行はやらない」と言っていたイギリスが「ジュノー計画」を立て、さらにはスペインも興味を持ったのです。日本だけでなく、オーストリア、西ドイツ、イギリス、スペインの5ヵ国は、ある程度、アメリカがコントロールしやすい国々です。私がロシアで訓練を受けることについて、在京アメリカ大使館は好意的でした。

 広報担当官は、勉強のパーティを開いてくれました。アメリカの核燃料の多くは、ロシアから輸入しているわけでしょう。つまり原子力、核、ロケットなどに関する限り、国際関係は非常に複雑で、絡み合い、ある種相互に依存しているということです。

広瀬 この軍需産業の世界は、裏がありますよ。現在の中国も北朝鮮もそうですが、貿易に関しては、裏取引でやっていますからね。知らないのは日本人だけだ。その結果、いつもアメリカに抜け駆けされる。

秋山 僕がちょうどワシントンにいたとき、「イラン・コントラ武器密輸事件」(1986年)が起こりましたね。当時、アメリカと敵対関係にあったイランに武器を売りつけ、その収益をニカラグアの反共ゲリラグループのコントラに送る、ということをホワイトハウスの全スタッフが計画しました。しかもイスラム国家が敵とするイスラエルが、これに一枚かんでいたのですよ。これが明るみに出てしまった。

 そんな闇の関係が、国際関係の中ではよくあるわけです。そういう仕組みを洞察していくと、国際関係をあまり単純に考えてはいけないと分ります。