大学入試改革を見据えた
テストを開発

対面授業では、生徒と講師が一体となって授業をつくり上げることで集中力を磨く

 今、受験産業が変革を進めている背景には、文部科学省による高大接続・大学入試改革がある。2020年には、これまでの大学入試センター試験から、思考力・判断力・表現力を測る“新テスト”への移行が検討されているからだ。

 代々木ゼミナールをはじめとするサピックス・代ゼミグループでは、既に幾つかの施策を打っている。例えば、新テスト受験1期生となる現在の中学1年生向けに論理力評価テスト「SRT(Scholastic Reasoning Test)」を独自開発、今年11月に第1回目を実施する。英語の4技能(読む・聞く・書く・話す)が今後、重視されるため、スピーキング力の強化を目的とした「英語スピーキング個別指導ジム」の開講も11月に予定。さらに、民間の英語検定試験の対策講座も来春から充実させる予定だ。

代ゼミ独自の映像授業である「フレックス・サテライン」。対面授業との使い分けも可能

「これまでの大学入試でも、論理的思考力は十分に問われていたと思いますが、表現力については確かに不足していた部分がありました。特に、グローバルな競争に直面している難関大学の入試では、コミュニケーションの基礎となる論理的思考力と記述表現力が今後、ますます重視されるでしょう。新年度から、代ゼミでは授業後にタブレットを使うアウトプットのカリキュラムをスタート、学んだ知識を積極的に表現する仕組みづくりを行っています」と髙宮共同代表は語る。

「東ロボ」に対抗する
論理的思考力を身に付ける

2008年に渋谷区代々木に完成した代々木ゼミナール本部校(代ゼミタワー)

 さて、「ロボットは東大に入れるか?」という興味深いプロジェクトが行われていることをご存じだろうか?

 これは21年を目標に、人工知能に東大前期入試を突破させようという国立情報学研究所の試みで、人工知能「東ロボくん」が代ゼミの模試に挑戦しているのだ。それを受けて代ゼミでは、試験のデータ提供や結果分析を行っているが、14年に受けた「東ロボくん」の全国センター模試の成績は、900点中386点。偏差値47.3。私大なら全国581大学の8割で合格可能性が80%以上のA判定であり、その能力は人間を脅かし始めているという。

 髙宮共同代表は「試験結果を分析すると、ロボットは大量のデータの中から解答を予測することはできるのですが、因果関係に基づいて答えを導き出すことは苦手のようです。子どもたちが身に付けるべきは、まさにその“答えが一つに定まらない課題”の解を導き出す論理的な思考力と表現力であり、私たちはその育成に力を入れているのです」と力を込める。

「教育とは本来、長い年月を経た後に評価されるもの」(髙宮共同代表)であるにもかかわらず、予備校という性質上、現実的には入試の突破という短期的な結果が求められる。来年60周年という節目の年を迎える代々木ゼミナールは、その相反する要求の狭間(はざま)で挑戦を続けていく。

"親身な指導"は健在、オリジナルのカリキュラムも

 代々木ゼミナールでは、"親身の指導"が建学の精神の一つ。例えば生徒面談では、学習に関する相談はもちろん、生活面などのアドバイスも行い、生徒とのコミュニケーションを大事にしているという。また、コースとしては高卒生に向けて、オリジナルカリキュラムコース「オリカリ」を用意。これは個々の学力や志望校レベルに合わせたカリキュラムを組むことができるシステムで、豊富な大学受験科の講座の中から自分に合った講師や授業を選択し、自分だけのオリジナル時間割を作成できるというもの。代ゼミのスタッフによる受講相談もあり、受験に関する疑問や不安も解消してくれる。