ラグビーW杯は準々決勝が終わり、ベスト4が決まった。勝ち上がったのは、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン。「ホーム・ネイションズ」と呼ばれる英国のウェールズ、スコットランド、アイルランドとフランスの北半球の強豪4ヵ国が姿を消し、南半球の国々ばかりが勝ち残ったわけだ。開催国のイングランドは予選プールで敗退してしまったし、地元ヨーロッパの人たちは深い失望感を味わっているにちがいない。

 準々決勝の試合で日本のラグビーファンが最も注目していたのは南アフリカ-ウェールズ戦だろう。世界ランク5位と4位の対戦は一進一退の激しい攻防が続き、後半35分に日本のトップリーグ・サントリーでプレーするスクラム・ハーフのフーリー・デュプレアが技ありのトライを決めて逃げ切った。

 準決勝(10月24日)で南アフリカが対戦するのは、ここまでの対戦相手すべてを圧倒して勝ち上がった世界ランク1位のニュージーランド。厳しい相手であることは確かだが、底力がある南アフリカ勝つ可能性はある。もし勝ち上がって優勝でもしたら、日本代表は今大会でその南アフリカを破った唯一の国になる。その意味でも注目の一戦だし、南アフリカには頑張ってもらいたいものだ。

ラグビー人気は続いているが
選手育成環境はお寒い状態

 そんな強豪・南アフリカに勝ち、サモア、アメリカにも勝って3勝をあげた日本代表効果によるラグビー人気は今も続いている。ヒーローになった五郎丸歩がプレーするトップリーグ・ヤマハ発動機の試合のチケットは売り切れたそうだし、他の試合も売れ行きは好調。わが子にもラグビーをやらせたいと、少年ラグビースクールへの問い合わせも増えているそうだ。

 ただ、現状の日本のラグビー選手育成環境はお寒い状態といわざるを得ない。強豪国と比べると雲泥の差なのだ。

 たとえばニュージーランドやオーストラリアは、ラグビーが一番人気のスポーツであり、少年のほとんどが幼い頃から楕円球に親しむ。遊びとして楕円球をパスしたりキックしながらラグビーの楽しさを覚えていくわけだ。そのなかから素質に恵まれた子が各地にある環境の整ったクラブでプレーするようになる。クラブではジュニア年代→ユース年代と年齢に応じた適切な指導を受け、試合を重ねていく。そうした試合のなかから、飛び抜けたセンスやサイズを含めた身体能力を持つ好素材がプロになり、そのなかで選び抜かれた者が国の代表になる。

 まず広い底辺があり、そのなかの有望株が最高の環境で最高の指導を受けて育ち、その過程にある厳しい戦いを勝ち残った選手がW杯に出場する。強いのも当然なのである。