昔の外観と骨格に
現代の住み心地を付加

 改修する前、この町家には風呂がなかった。西陣織の織機を置く工房部分は広いが、生活の場である台所は狭い。物置や丁稚奉公人の部屋だった2階部分は立てば頭がつかえるほど天井が低い。

 西陣一帯に多い、「織屋建(おりやだて)」と呼ばれる造りだ。その伝統を尊重し、リノベーションであえて「天井を高くする」ことは避けた。その代わり、昔の外観と骨格を生かしながら、内部はガラリと変えた。

 工房部分は11.7畳のLDKとなり、吹き抜け天井のトップライトから光が注ぐ明るい空間に。台所は最新のシステムキッチンを入れ、引き戸を引けば隠せるように。古さと新しさが入り交じった、レトロな雰囲気の空間が生まれた。

京町家には小さくても必ず坪庭がある。緑をめでるように、ウッドデッキを設け、奥には板塀を建てて洗濯物を干すスペースを設けた(左)/便利なシステムキッチンを入れ、普段は引き戸で隠せる仕組みに。引き戸の建具は昔のものを塗り直して活用(右)

 階段の横にしつらえた壁面収納は、建物の雰囲気に合わせ新たに造作したもの。照明はあえて骨董品をセレクト。2階はベッドルーム用の洋室4.8畳と、次の間としてリビングを眺め下ろせる和室3畳を設けた。

 物件価格は3000万円台前半(すぐに売れたため、詳細は書かないでほしいとのこと)。買い手は“京都府外の人”だったそうだ。