2015年10月21日。ある「歴史的瞬間」が、この日本で実現した。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムトラベルするクルマ「デロリアン」が、映画に描かれていたとおりの「ごみを燃料にする」技術で走ったのだ!

ごみで「デロリアン」を走らせた男!<br />あの映画が見せた“未来”は、こうして現実になった

 奇しくも映画第一弾の公開から30年が経ったこの日、全世界に衝撃を与えたイベントを仕掛けた人物こそ、日本環境設計の社長、岩元美智彦氏だ。自身も映画ファンでデロリアンを見て志を立てた岩元氏に、まさに夢がかなった瞬間といえる<そのとき>を振り返っていただいた。<取材・構成:萱原正嗣>

全世界注目の“歴史的瞬間”到来!
――お台場でデロリアンが走った<そのとき>

 2015年10月21日、16時29分――。

 30年来待ちつづけた<そのとき>が、ついに目前に迫っていた。

 私はこの日、東京・お台場にある「アクアシティお台場」の屋上駐車場にいた。フジテレビ社屋の目の前にあるその場所には、この日のために、特設ステージが設けられていた。

<そのとき>の到来まで1時間を切り、屋上にはすでに大勢の人が集まっている。その様子を舞台袖で眺めながら、私はひとり胸を高ぶらせていた。でもそれは、ステージに上がり、この大勢の人たちの前で話をする緊張からではない。

30年温めつづけてきた思いが、ついに形になる――。

 自らの夢がかなう瞬間を前に、溢れんばかりの喜びが体の奥底から沸き上がっていたのだ。

 時刻が16時に近づくと、スピーカーからお馴染みのテーマ曲が流れ、ステージ脇に設置されたスクリーンに懐かしい映像が映し出される。その映像とは、1985年に上映され、世界中で大旋風を巻き起こした映画、『バック・トゥ・ザ・フューチャー(Back To The Future、略称BTTF)』の名場面の数々だ。

 主人公のマーティ(マイケル・J・フォックス)と、自動車を改造してタイムマシンをつくった科学者のドク(クリストファー・ロイド)。2人の姿がスクリーンに映ると、会場に駆けつけた750名の映画ファンのボルテージが一気に高まる。居並ぶ観客の隙間からスマートフォンを掲げる手がいくつも見えた。100名を超える報道関係者も、観客の熱狂を写真や映像に撮ろうと動きまわる。

 この日のイベントは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開30周年を祝うために開かれたものだ。だが、開催日時がこの日のこの時間に設定されたのには大きな意味がある。

 シリーズ2作目の『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2』(1989年公開)で、マーティーとドクの2人は、劇中の時間の1985年から、「2015年10月21日16時29分」にタイムトラベルしてやってきた。

 そう、<そのとき>とは、映画で描かれた“未来”を指しているのだ。

 この日、<そのとき>の到来に合わせて目玉のパフォーマンスが用意されていた。
 マーティーとドクが乗っていた自動車型のタイムマシンは、通称「デロリアン」と呼ばれる。その「デロリアン」を、2人が“未来”にやってきた時間に合わせ、会場で走らせることになっていた。報道関係者や関係者も含めると総勢1000人近い人が、<そのとき>の様子をこの目で見、映像に収めようとイベント会場に集まったのだ。

 そして、ついに<そのとき>が訪れる。

「デロリアン」のエンジンに火が灯され、会場が一体となってカウントダウンが始まる。

「10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1……」

 吹き上がるスモークとともに、「デロリアン」がゆっくりと走り出す。

 鳴り止まないシャッター音、観客たちの熱狂……。

 その光景を前に、私は涙がこぼれそうになるのをこらえるので必死だった――。