リサイクル会社と
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の意外な接点とは?

 ここで、遅まきながら私の自己紹介をしておきましょう。

 私は今、ごみを集めてリサイクルし、燃料をつくる会社を経営しています。

 その会社の名は「日本環境設計」。2007年、私が42歳のときに創業し、衣料品に含まれる綿繊維からバイオエタノールをつくる技術開発に成功しました。

 そして、この技術を活用してごみを減らし、少しでも多くの燃料をつくるため、「FUKU-FUKU」という着なくなった衣料品を集めてリサイクルするしくみを構築し、運営に取り組んでいます。今では良品計画パタゴニアイオンセブン&アイなどの多くの企業の協力を得ていて、この日のイベントのために全国1450ヵ所の小売店の店頭で消費者から衣料品を回収し、バイオエタノールを製造しました。

 なぜ、リサイクルやバイオエタノールが『バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTTF)』や「デロリアン」の話と関係があるのか――。

「デロリアン」には、タイムトラベルができる以外に、もうひとつ大きな特徴があります。

ごみで「デロリアン」を走らせた男!<br />あの映画が見せた“未来”は、こうして現実になったこの日走ったデロリアンは、劇中でドクがごみを放り込む「ミスターフュージョン」も再現

 それは、ごみを燃料にして走ることです。

 映画の劇中には、こんなシーンがあります。
 ドクが「デロリアン」を動かすため、ごみ箱のなかからバナナの皮や飲み残したビールを漁り、「デロリアン」に放り込む。すると、それを燃料にして「デロリアン」が走り出し、過去へ未来へ旅立っていく……。

 30年前、私がまだ学生だった21歳のとき、映画館でこのシーンを見て、私は衝撃的なまでの感動を受けました。

「すごい! 30年後の未来は、ごみでクルマが動くようになっているんだ!」

 その感動が、今日の私をつくる原動力になり、この日のイベントを企画したそもそものきっかけとなっています。

 実は、この日のイベントで「デロリアン」を走らせた燃料も、私たちが消費者から集めた衣料品をリサイクルしてつくったバイオエタノールです。
 日本の法律では、バイオエタノールだけでクルマを走らせることが認められていないため、実際には、ガソリンにバイオエタノールを混ぜたものを燃料として使いましたが、このとき使ったエタノールは、紛れもなくごみからつくったものです。

「あなたの古着を集めて、みんなでデロリアンを動かそう」と消費者に呼びかけ、イベントのためにこの2ヵ月ほどで回収した古着はおよそ20トン。事前の想像を大きく上回り、バイオエタノールにして1万リットルにもなる量でした。

 私自身の夢の実現のために始めたことが、多くの人たちの共感を得ることができた。私ひとりの夢だと思っていたら、実はみなさんも同じように思い描いていた夢だった。消費者参加型のしくみで古着を集めたことで、その夢の広がりを実感でき、この2ヵ月のあいだ、毎日夜も寝られなくなるほど興奮しました。