子どもとのあらゆる接点が
MC型授業の準備になる

―しゃべらない子どもや、恥ずかしがったりする子どもはいないのですか。どうやって子どもたちから話を引き出して、クラス全体を巻き込んでいくのでしょう。

沼田 先生がゴールを決めちゃうと、しゃべれなくなる子はいます。問い掛けるときに、まずは「何でもあり」という姿勢を見せて、どんな意見でもとにかく出してみようという雰囲気をつくることですね。そうすると子どもたちは、正確に理解しているわけではなくても、聞いたことのある単語や、ニュースで聞きかじった情報などを話しだしたりするんです。取りあえず新しい知識を使ってみたいんですよ。それに対して「何それ?」「どういう意味?」と聞くと、「えーっと……」とその場で考え始めるので、そこで助け舟を出すとか、他の子に話を振ったりして話の輪を広げていくんです。だいたいクラスに1人や2人は何でも話したがる子がいますので、詰まったときはその子たちに突っ込んでもらったりもしますね。

 後は、クラス全員と毎日交換日記をしているんですが、そこで得られる情報も授業では大きな助けになります。その子が興味を持っていること、得意なこと、不得意なことなどを、タイミングを見計らって出してあげると、子どもは乗ってきてどんどんしゃべる。交換日記はその機会の一つですが、子どもたち一人一人の情報は常にアップデートするように心掛けています。

―MC型で行う授業のベースとなっているのは、ひとり一人の生徒とのきめ細かいコミュニケーションなんですね。

沼田 学校での出来事が学校の中だけで終わってしまわないように、親御さんも巻き込みますよ。普通、学校から電話がかかってくるっていうと悪い知らせじゃないですか。でも、僕は良い知らせのときも電話します。この間、クラスでずっと漢字テストで満点を取れなかった子がいたんですけど、頑張ってようやく取れたんです。そこで、その子が帰り着く前にお母さんに電話して、「今日は漢字で満点を取ったので、ぜひ褒めてあげてください」と伝えたんです。もちろん僕から電話があったことはその子には内緒です。学校でのことを子どもが報告しても、背景が分からないと家庭ではその重要性が見過ごされがちです。頑張って満点を取った事実が確実に成功体験となるように、学校でも家庭でもフォローする。努力したことは必ず認められるということを体感させることで、次につなげるようにするんです。