累計200万部を突破し、NHKでドラマ化もされた人気経済小説の『ハゲタカ』。いよいよ週刊ダイヤモンド11月7日号(一部地域をのぞき2日発売)より、待望のシリーズ5『シンドローム』の連載が始まる。ここでは、新シリーズでテーマとなる東日本大震災以降の電力を八つの質問でおさらいしておきたい。

Q1 東日本大震災で福島第1原発に何が起こったのですか

経済小説ハゲタカ新作のテーマ「日本の電力」Q&Aハゲタカシリーズの主人公・鷲津政彦
画・茂本ヒデキチ

 歴史的な大事故となり、原子力発電の安全神話は崩壊しました。

 原発ではまず、ウランなどの核燃料に核分裂を起こさせ高温にします。その熱で水を沸騰させて水蒸気にし、その力でタービンを回し発電する仕組みです。

 放射性物質が漏れることのないよう、原子力発電所には高い密閉性が求められます。福島第1原発も、圧力容器や格納容器など「五重の壁」で守られていました。

 また、核燃料はうまく制御しなければ、熱を放出し続けます。仮に事故が起こった場合、すぐさま水で冷やす冷却システムが作動することが、非常に大事なのです。

 しかし、東日本大震災では、強い揺れに加え、津波による浸水が原因で電源の大部分を失い、核燃料を冷却できなくなりました。核燃料の温度は2200度まで上昇したとされ、その熱で鋼鉄製の容器は溶かされ燃料が漏れ出ました。

 さらに、高熱により冷却用の水が水蒸気となってしまい、水素ガスが発生。ついには水素爆発を起こし建物が壊されました。

 その結果、放射性物質が外に漏れ出て、周辺住民は避難を余儀なくされました。

Q2 事故により、電力事情はどうなったのでしょうか

 福島第1原発は首都圏のための電力をつくっていました。そのため、事故直後は、首都圏では計画停電が実行されました。停電などめったに起きない日本だけに、混乱状態に陥りました。