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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

自動運転は普及するのか、という愚問

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第18回】 2015年11月6日
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自動車がIoT化した世界

 私が想像する20年後について、少しお話ししてみましょう。

 さあ、今日はあこがれの女性とデートです。表参道にショッピングに出かけることになり、カーシェアリングで事前に予約した自動運転のスポーツカーをモバイルで呼び出します。途中でピックアップした彼女を助手席に乗せて表参道に到着すると、フェラーリは勝手にガレージに帰っていきました。

 思う存分ショッピングを楽しんだ後は、高級食料品店に回ってフレッシュなチーズと野菜を手に入れました。もう両手に持ちきれないほどの荷物です。そこで自動運転のミニバンを呼び出して、彼女の部屋まで行って、美味しい手料理を楽しむことにしました。こんなスマートな休日はどうですか?

 自動車がIoT化した世界では、繁華街やショッピングセンターに巨大な駐車場は必要ありません。ガスステーション、まして水素ステーションを利用することも、ほとんどありません。

 夢物語と笑う人がいるかもしれませんが、自動車を所有せずとも快適に移動するためのシステムは、「ウーバー」などのタクシーやハイヤーの配車サービスや、スマートフォンで認証して自動車のロックを解除するカーシェアリングなどのサービスとして、すでに普及しつつあります。高速道路の様子も変わるでしょう。

 同じように高速道路を走っていても、のんびり行きたい人もいれば、急いでいる人もいます。追い越し車線をゆっくり走る先行車に出くわしたら、ビットコイン(あるいはネット上の決済システム)を飛ばして「車線を譲ってください」と交渉する。ドライバーの気分やスタイルに応じて、時間を優先するのか、燃費や環境を優先するのかを選べばいいということです。

 自動運転が普及するのに伴って交通事故はどんどん減っていくでしょう。たくさんの自動車から集まるビッグデータは交通渋滞を解消し、社会の効率を高めることにも役立ちます。

 十数年前、私の会社で、アメリカのある運送会社の配達システム開発の仕事を請け負ったことがあります。荷物を配達する住所データを解析して、最も効率よく配達できる順番を決めるソフトを作成しました。

 ご存じのようにアメリカの道路は自動車が右側通行で、赤信号でも右折できる交差点がほとんどです。つまり、できるだけ右折しながら配達したほうが効率がいい。事前に効率のいいルートを決めることができれば、トラックには配達の順番にしたがって荷物を積んでいけるので、さらに仕事の効率が上がります。

 これは一つの例に過ぎませんが、街中の自動車から集まるビッグデータを上手に活用すれば、多くの問題を解決し、社会の効率を上げることにつながるでしょう。

(今回の記事は、最新刊からの一部抜粋です)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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