ジャーナリズムはいかにして生き残るのか。ここ数年、こんな議論が続く間にも、全米の都市で数々の新聞社が消えていった。

 そうした中で、新聞社というビジネス・モデルは成り立たないとしても、これからのジャーナリズムを支えるモデルは、まだ未開拓なのではないかと、さまざまな試みが行われている。殊に、ピカいちのジャーナリストとNPO(非営利財団)という運営方法の組み合わせで注目されているのが、「Propublica(プロパブリカ)」である。

「調査報道」を専門とするニュース配信組織
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 プロパブリカが設立されたのは、2008年。元ウォールストリート・ジャーナル紙の主幹編集者、ニューヨークタイムズの調査報道チーフ、その他ピューリッツァー賞受賞歴のあるジャーナリストらを集めてスタートした。

 資金を提供したのは、サンドラー財団。銀行業で富を築いたサンドラー夫妻が、正常な社会を機能させるために欠かせない機能であるジャーナリズムを支援しようと、毎年1000万ドルを寄付し続ける。「権力の乱用には耐えられない。腐敗には我慢ができない。パワーのある人間が弱者を食い物にすることがあってはならない」と語るハーバート・サンドラー氏は、妻のマリオンと共にリベラルな思想の持ち主で、数々の活動組織に寄付を行ってきた人物だ。

 プロパブリカが専門とするのは「調査報道」だ。企業の不正を暴き、社会の闇をあぶり出すのに、調査報道は大きな役割を果たしてきた。だが、この調査報道こそ、新聞ビジネスのコストカットの中で、最初に縮小を余儀なくされた部門なのだ。