伝統ある大企業が
ベンチャーのようなスピード感で動くには?

GEに学ぶ、大企業病に陥らない組織作り『GEの口ぐせ』 安渕 聖司著
PHP研究所
283p 890円(税別)

「これって十分に速いの? もっと速くできるんじゃない?」「もっと開発スピードを上げよう。まずはお客様に聞こう」といった会話が飛び交う職場は、とても活気にあふれている。これがベンチャー企業であれば、珍しくはない、よくある光景だ。しかし、世界175カ国に30万5000人の従業員を抱え、1486億ドルの売り上げ(2014年実績)を叩き出す巨大コングロマリット企業が、こんなスピード感で仕事をしているとしたら驚くだろうか。そう、GE(ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)の社内では、実際にこのような会話が日常的に交わされているのだ。

 技術力を売りにしている会社で、冒頭のようなことを営業担当者が言い出したとしたら、開発現場から「今回の開発がいかに技術的にチャレンジングかわかっているのか?」「ちゃんとお客様に説明したのか?」などという反発の声が上がりそうだ。だが、GEではそんな対立はないらしい。

 GEの典型的な製品開発では、まず機能を限定したプロトタイプをすばやく作って顧客に提示するという。そして、顧客からフィードバックをもらい、それをもとに軌道修正をかけながらスピード重視で前へ進んでいくことが是とされる。

 このようなやり方は、ベンチャー企業を参考に導入されたものだそうだ。GEの社員たちは「“大きくて遅い会社”になったら競争に負ける」という強い危機感をもって仕事をしている。「さらに効率化できないか」「それ、もっとシンプルにしようよ」といった言葉が社内のあちらこちらで交わされるなど、常にスピードアップを念頭においたプロセス改善に社員たちの意識が向いている。

 GEの設立は1892年。120年以上の歴史がある巨大企業に、どうやってベンチャー企業のようなスピード感あふれるやり方を根づかせることができたのか。