外資系企業の日本法人を率いることは簡単ではない。本国とは異なる商習慣などの文化があり、市場の反応も同じではない。だが2年前、Boxの日本法人ボックスジャパンの代表取締役社長に2年前に就任した古市克典氏はラッキーだ。「本社からの指示待ちではなく主体的に動くことができる」と笑う。本社との間にある信頼関係のもとで日本のトップとしての課題をこなすだけでなく、日本発のイノベーションを世界に届けたいという野望も抱いている。Boxの本拠地がある米サンフランシスコで9月末に開催した「BoxWorks 2015」で、古市氏に話を聞いた。(取材・文/末岡洋子)

(Boxは、クラウドのファイル同期・共有サービスをスタートし、コンテンツ管理プラットフォームに拡大しているITベンダー。2015年1月にはNY証券取引所に株式上場も果たした。)

――Boxの日本語化を発表したのが2014年5月。これまでの経過をどう評価しますか。

クラウドを活用しなければ<br />日本企業は世界から取り残されるボックスジャパンの代表取締役社長、古市克典氏。NTTから日本ベリサインの社長に、その後2012年より現職。古市氏の人材採用に対する厳しさは米国本社の幹部にも伝わっており、高く評価されていた Photo by Yoko Sueoka

古市克典社長(以下・古市) 国別の顧客数は公開していないが、世界には5万以上の会社や組織がBoxを導入している。この中には、セブン-イレブン・ジャパン、DeNA、GREE、SEGAなどの日本企業も入っている。このうち、DeNA、日揮は日本語化前から使っていただいている。日本でユーザー数が最大の顧客となっているのは早稲田大学で、教職員と生徒を合わせて5万5000人が利用している。

 当初の目標を上回っているので、そういう意味では順調。だが、Boxの製品を知れば知るほど、もっと普及していいと思っている。

 目標を上回った背景には、日本のお客様が求めるセキュリティと使い勝手、この2つをBoxが満たしていたからだ。パターンとしては、まずはマーケティングなどの部署に入り、その後営業や購買など他の部署に広まり、全社に広がるという形式が多い。ただ、2014年末から全社で一括導入するという事例が出てきている。公開している企業だけでも、早稲田大学、楽天、第一三共などがこのパターンだ。共通して強いリーダーシップをもつCIO(最高情報責任者)がおり、Boxの長所と潜在メリットを理解して導入を決定していただいている。

 Boxは世界レベルでメディア・エンターテインメント、ヘルスケアなどを強化しているが、日本もこの分野で強い。これに加えて、製造業、建設業、国際展開している商社も潜在市場だと思っている。

――日本はSI事業者が強いという特徴がありますが、このような市場の特性にどうやって合わせていきますか?

古市 米国では直販がほとんどだが、日本では間接販売が中心。現在、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、三井情報(MKI)、マクニカネットワークスの3社と直接提携しており、この3社のもつ販売2次店にもBoxを提供していただいている。われわれが顧客企業と直接やりとりするハイタッチ営業も行っているが、締結のときはこれらパートナー企業に入っていただく。

 つい先日、3社に加えてNTTコミュニケーションズがVPNサービスとBoxを組み合わせて販売することを発表した。また、グローバルレベルでIBMと提携しており、日本でもIBM日本法人との協業がはじまるので、まもなく5社になる。