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「夫婦別姓」「女性のみ6ヵ月再婚禁止」論議に覚える違和感(下)

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第136回】 2015年11月7日
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 結論から言えば、私は夫婦の姓なんて双方の「選択」に任せていいと思っている。

 そういった意味では、彼女たちと考えは同じだ。結婚する際、夫の姓を名乗りたければ、従来の「婚姻法」に基づけばいいし、婿入りも従来どおりだ。原告団の小国さんや塚本さんが望むように、旧姓のまま苗字を変えず結婚したいと言う人がいれば、韓国やドイツの婚姻法同様、別姓夫婦の婚姻を認めればいい。

 ただし、ドイツでは子どもは父親の姓を名乗ると決められているので、日本も夫婦別姓を認めるのであれば、子どもの姓をどうするかも予め決めておかなければならない。苗字も子どもに選択させればいいという考えがあるが、それには反対だ。年端もいかぬ子どもに判断なんかできるわけがないからだ。だから、夫婦別姓を選んだ場合、お母さんは子どもと苗字が違ってしまうことも考慮しておかなければならない。

 また、夫婦別姓を主張する人たちは、偕老同穴についてもきっちりした定義を論じておく必要がある。苗字の違う嫁(もしくは婿)の名を先祖代々の墓に彫るか否かの議論だ。私は、田中家の墓に田中太郎さんの名があってその横に夫婦別姓の山田花子さんの名があり、子どもの田中一郎さんの名の横にキラキラネームな嫁の佐藤星影夢(ぽえむ、と読むらしい)さんの名前があったら面白いと思うけど。

 夫婦別姓はアリだと思いつつ、では何故この問題に違和感を感じるかというと、原告団の彼女たちの主張に、理解に苦しむ点があるからだ。

〈民法は、結婚した場合は「夫または妻の氏を称する」と同姓を定めているが。過去四〇年で夫の姓を選んだ夫婦の割合は九六~九八%で推移している。事実婚の夫婦ら五人が国に一〇〇万~一五〇万の賠償を求めて提訴。一、二審で敗訴したため上告した。

 弁論で夫婦側は「自由な話しあいによる合意があったとは言えず、日本の社会状況は女性だけに姓の変更を強いている」と指摘。「姓は人生や人格に根ざしており、やむを得ず改姓した女性たちは『自分でなくなってしまった』と苦しんでいる。個人の意思に反して姓を奪うのは明らかな人権侵害だ」と訴えた〉

 これを読んで、私はゲンナリしてしまったのである。

 裁判を起こすにあたり訴えは必要だが、婚姻による改姓により精神的苦痛を強いられた――、とする主張にまずガッカリだった。そのうえで国にカネを払えと賠償請求する行為に、今度は萎えてしまった。夫婦別姓を唱える人たちの理想は高いものだと思い込んでいたのは誤りで、行き着くところはそこかいッ! とため息が出てしまうのである。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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