長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第20回】 2015年11月12日 樋口直哉 [小説家・料理人]

松下幸之助が94歳まで続けた日本人らしい健康法

イラスト/びごーじょうじ

 1917(大正6)年の出来事である。1人の男が「会社を辞めてぜんざい屋でもしたい」と妻に打ち明けた。大の甘党の彼は好きなぜんざいで商いをしてみたいと考えたのだ。だが妻から「あなたに水商売は向きませんよ」と諭した。

 ぜんざい屋になることを諦めた彼が次にとり組んだのが電球ソケットの改良だった。そうして出来上がった試作品を勤め先に持ち込むも、相手にされない。のちに「このソケットは一利一害で全くの失敗であったことがわかった」のだが、彼はこのソケットを製造して見返してやろう、と独立を決意。サラリーマン生活から足を洗い、経営者への道を歩みはじめる。

 男の名は松下幸之助。松下電器産業、現在のパナソニックを一代で築き上げた大経営者である。後年、経営の神様と呼ばれ歴史に名を残す松下幸之助はこの時、妻に止められなければぜんざい屋のおやじになっていたのかもしれない。

 日本の経営者に長寿者は多いが、松下幸之助の94歳も立派である。もともと体が弱い幸之助は、何度も重い病気を患った。不眠症にも悩まされ、睡眠薬を手放せなかった。

 そんな生活故に幸之助は健康には人一倍、気を使っていたようだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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