創続総合研究所

相続は、やはり「損得勘定」ではなく「心理学」です
~スムーズな農業相続には、コミュニケーションが不可欠

相続になって噴き出す「気持ち」

八木 娘さんたちの要求は、どんなものだったのでしょう?

児島 それが、明確ではなかったんですよ。「とにかく判は押したくない」の一点張りでした。理由は最後までわかりませんでしたが、心を閉ざしているように私には見えました。

八木美代子
ビスカス代表取締役

八木 なるほど。すんなり相続がまとまるのは、気持ちのうえで納得できなかった。

児島 最終的には、現預金を半分ずつ彼女たちに渡すことで、なんとか遺産分割協議はまとまったようです。トータルの遺産から見れば少ない金額でしたけど、現預金すべてですから、それで納得したわけです。当然のことながら、実家と妹達の間が絶縁状態になってしまいました。

八木 やる気はあったのに、先祖代々受け継いできた家業を途絶えさせることになってしまったわけだから、辛いですよね。

児島 やっぱりお父さんの責任大と言わざるをえません。まず遺言書を残さなかったのが大失態です。娘たちの遺留分(*)に最大限留意した遺言書を残せば、息子に確実に農地を渡す相続が不可能ではなかったはずなのです。

 かつ、農地に関しては、「生前一括贈与」を行うべきでした。農地を息子に贈与すれば、その贈与税について、納税猶予の特例が適用できたのです。

八木 やはり相続対策は、被相続人が主体性を持つべきなんですね。

*遺留分 民法に定められた、相続人が最低限相続できる財産。

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八木美代子 [株式会社ビスカス代表取締役]

早稲田大学卒業後、リクルート入社。1995年に株式会社ビスカスを設立。税理士を無料でご紹介するビジネスモデルを日本で初めて立ち上げ、現在まで10万件以上のマッチングを実現。相続に強い税理士のみを集めたサイト「相続財産センター」を運営し、相続コーディネーターとしても業界ナンバーワンの実績を誇る。著書に『相続の現場55例』(ダイヤモンド社)、『相続、いくらかかる?』(日経BP社)、『相続は『感情のもつれ』を解決すればお金の問題もうまくいく』(サンマーク出版)などがある。
株式会社ビスカス

 


相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術

相続の別名は、「争続」。仲の良かった兄弟姉妹が親の遺産を前に骨肉の争いを演じるというのは小説やテレビドラマの中だけの出来事ではないようです。諍いの中心はもちろん「お金」。ですが兄弟姉妹には、他人がうかがい知ることのできない「本音」「思い」があるようで……奥底にある「心の綾」を解きほぐすと争いから一転、分かりあえるのが家族。そうした「ハッピー相続」の例を解説します。

「相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術」

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