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「プロ経営者の教科書」CEOとCFOの必修科目
【第10回】 2015年11月17日
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ダイヤモンド・オンライン編集部

元国税庁長官が日本企業に訴える
タックス・プランニングの必要性

渡辺裕泰・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授

 もう1つの理由は、経営者の意識の問題です。日本の経営者は、税金をきちんと払うことで社会に貢献することを美徳と考えるところがあります。立派な考えだとは思いますが、それでは税をコストと考えて、その支払いを抑制しようとする米系企業と競争する上で不利になります。

 以前は、国税庁長官まで務めた私が、税金を減らすタックス・プランニングを推奨してもいいのかということを、面と向かって言われたこともあります。しかし、国際競争力を維持するという観点からも、タックス・プランニングは避けて通れないと思います。また、日本の視点で言えば、海外で税金をたくさん払っても、日本社会への貢献にはなりません。経営者の税に対する意識は以前よりは高まってきていますが、まだまだ米系多国籍企業との差は大きいと感じています。

第一に考えるべきは無形資産からの
収益に対する課税を減らすこと

――タックス・プランニングとは、具体的にどのようなことをするのでしょうか。

 第一に考えるべきなのは、無形資産の扱いです。現代の先進国企業では、特許やノウハウが利益の源泉の大きな部分を占めています。そこで、重要な無形資産を税率の低い国の会社に持たせ、そこに利益を集中させることで、実効税率を下げようというのが基本的な戦略の考え方になります。日系企業は、重要な無形資産を日本の親会社で抱え込んでしまう傾向があり、タックス・プランニングの機会を失っているので、検討の余地があると思います。

 オランダ、スイス、アイルランド、イギリスなどの国では、自国へ収益の源泉となる無形資産を移転してもらうために、特許権(パテント)などの知的財産権からの収益への課税を低税率にする「パテントボックス税制」を導入しています。BEPSでどう扱われるか注意を払う必要はありますが、こんなものも利用することを考えてみるべきでしょう。ただし日本は、税率20%未満の国で稼いだ利益は日本の親会社の利益に合算して課税するタックスヘイブン税制を導入しているので、これにひっかかると、いくら税率が低くても、わざわざ海外に無形資産を置く意味はなくなってしまいます。パテントの移転先としては、タックスヘイブンに該当しない国であることが条件になります。

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企業経営に携わるCEO、CFOには、M&A、コーポレートガバナンス、リスクマネジメント、財務戦略、グループ経営管理、テクノロジーなど、様々な分野の知識が求められる。こうした知識を蓄えることは経営者の「教養」を深めることにつながり、企業経営の質を高めて行く。CEO、CFOが学ぶべき「必修科目」とは何か。各分野の第一人者たちに聞いて行こう。

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