アメリカなしで
日本は中国と向き合うことができるか

しかし歴史が繰り返すとは限らない。人類は過去の失敗から学ぶことができると、私は強く信じている。ナショナリズムがかつて世界にいかに破壊的な影響を与えたかを理解すれば、その繰り返しは防げるはずだ。ヨーロッパにとって戦争に明け暮れた時代は遠い過去になった。もはやヨーロッパ全体を巻き込む大戦争が起きることは、考えられない。アジアはアメリカに平和と安全保障を頼るのではなく、争いを仲裁し、制限する地域機構を構築する必要がある。

わたしは長年CIAで、アメリカが陥ってはならないシナリオを歴代大統領に示してきた。その警告の一部は深刻に受け止められたが、オバマ政権をはじめとするいくつかの政権は、未来に向けてアメリカの準備を整える仕事を十分にしてこなかった。CIA本部のロビーには、聖書の一節が壁に刻み込まれている。

「……されば汝は真実を知り、真実は汝を自由にする」

これこそが未来のトレンドを分析する目的だと、私は思う。未来について知識がありながら、それに基づく行動を起こさないなら、物事がうまくいかなかったとき、私たちは自らを責めるしかない。