戦場の勝敗には「3つのパターン」しかない

話を思考力の戦場に移して考えてみよう。

そもそも、思考力で競合に打ち勝つというのは、どういうことだろうか?
それは思考の成果、つまり発想において、相手よりも優位に立つことである。

「発想」においてライバルに負けるときには、次の3パターンしかない。

(1) 自分も発想していたが、競合のほうが実行が早かった
(2) 自分も発想し得たが、競合のほうが発想が早かった
(3) 自分にはまず発想し得ないくらい、競合の発想が優れていた

なぜ「できる人」から転職してしまうのか?

この3つの敗北のうち、思考力による逆転が有効なのはどれだろうか?
(2)の敗北だ。

(1)の実行面の敗北にはさまざまな要因がありうる。個人や組織が活用できるリソース(ヒト・モノ・カネ)に限界があって、競合のほうが速く実現に動けたのかもしれないし、上司や役員の決済が遅れたせいで他社に先を越されたのかもしれない。
こうしたことが原因である場合、思考力がこの敗北に介在する余地はない。

また、(3)の敗北は回避が難しい。感情面でも「今回は勝ちようがなかった」という感想が先行するため、この種の敗北をなんとかしようというモチベーションは、なかなか湧いてこないだろう。野茂投手に打ち取られた実業団の選手たちは、まさにこの敗北を味わっていたわけだ。

ほかの2つとは対照的に、(2)の敗北はそもそも「回避できたかもしれないもの」だ。
あなたも相手と同レベルのアイデアを発想し得たはずなのに、現実にはそれより低いレベルのアイデアしか出てこなかった。
なぜそうなったのかといえば、それはあなたに「思考」が不足していたからだ。

かくして、(3)の圧倒的敗北がある種の清々しさを伴うのに対し、(2)の敗北はいつも苦々しい感情と一体である。
(3)の敗北は「まいった」、(2)の敗北は「しまった」と名づけることができるだろう。