フィリピン 2015年12月2日

マニラの大問題 首都圏渋滞で1兆ペソの経済損失

マニラを訪れたことがある人なら誰もが経験する大渋滞。通常15分で行かれるところに1時間以上かかることもあり、渋滞による経済損失は年間1兆ペソ、1日約80億円に達するという。解決の方法はあるのか? 元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住19年の志賀さんが、その現況をレポートします。

 マニラ首都圏の渋滞で毎日30億ペソ(約80億円)、年間1兆ペソ(約2兆6000億円)の経済損失が生じていると国家経済開発庁(NEDA)が発表した。損失額は国内総生産(GDP)13兆ペソの8%、国家予算の半分に相当する。

 朝夕のラッシュ時は、自宅からフィリピン退職庁(PRA)まで車で15分で行けるはずのところを1時間は優にかかることもある。マカティの中心地を横断するのに1時間、約束の時間に間に合わせるために途中から歩くこともしばしばだ。

 徒歩なら車の半分の時間で行けるし、正確に時間が読めるから安心ではあるが、雨季の真っ只中で雨でも降り出したらおしまいだ。

サウス・スーパーハイウエイはマニラ南部からマニラ港に向かう唯一の幹線道路で、終日トラックが列をなし、一般車両も巻き込んで最悪の渋滞道路になる(左)。最近急増した個人用モーターバイクが渋滞の中をジグザグに走りぬけ、ドライバーの頭痛の種になっている(右)【撮影/志賀和民】

 この渋滞は首都圏周辺、北のケソン・シティ、ブラカン、リザール州あるいは南のカビテ、ラグナ、バタンガス州方面から流入する幹線道路においては地獄のようだ。とくにEDSA通りは北からマカティに向かう唯一の幹線道路で、普通は20~30分で行けるところが、数時間かかることがざらにある。最近では朝夕のラッシュ時間帯ばかりではなく、終日渋滞している。

 そのため政府は、国家警察高速道路警備隊(HPG)の隊員約100人を監視の任につけた(首都圏の交通行政は本来、首都圏開発局MMDAの役割)。それに対してメディアは、根本的解決なしには、一時しのぎの策は何の効果もないとこきおろしている。

 EDSA通り以外でも、南からマニラ市の港に向かうサウス・スーパーハイウエイもコンテナトラックの列で、終日ほとんど動いていない。首都圏の鉄道は、LRT1とMRTの環状線、マニラを横断するLRT2、PNR(国鉄)しかなく、しかもラッシュ時は超満員で人々は車で移動するしか方法がない。

LRT1、2、MRT(左の写真)それにPNR(国鉄、右の写真)があるものの輸送力が小さくて焼け石に水だ【撮影/志賀和民】

 ちなみにマニラの通勤の主役は、長距離移動のためのバスあるいはUV(小型の乗り合いバン)、中距離移動のジープニー(乗り合いタクシー)、タクシー、そして、短距離用のトライシクル(三輪バイク)あるいはパジャック(三輪自転車)などの公共交通手段で、それに無数の自家用車がひしめき合っている。

 そのため庶民は、ターミナルでいつ乗れるかわからないバスなどを待って、毎日、数時間を費やし、ラグナ、カビテ、ブラカンなどのベッドタウンからの通勤にエネルギーを使い果たしている。

郊外へ移動手段はバスが主体で、中、長距離バスが幹線道路にひしめく(料金は固定性)【撮影/志賀和民】
中距離移動はジープニーが主役、頼もしい庶民の味方だ(初乗り8ペソ=約20円と格安だ)【撮影/志賀和民】
UV(Utility Vehicle、左)は、比較的長距離を点と点で結ぶために乗り換えなしに通勤できて便利だが、その分だけ高めだ(料金は固定性)。一方、タクシー(右)はメーター制なのだが、運転手によっては料金は交渉次第となって外国人には頭が痛い【撮影/志賀和民】
近距離移動は、トライシクル(左)とパジャック(右)が主役だ。地方ではこのトライシクルとパジャックが渋滞を引き起こす主役でもある【撮影/志賀和民】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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