「この『もしドラ』の中にも描かれていたけど、主人公は、野球部のみんなにいろんな役割を与えていたでしょ? 例えば、頭のいい子にはキャプテンとか、足が速い子にはピンチランナーとか。そうやって『重要な仕事』を増やすことで、部員一人ひとりが活躍できる『居場所』を作っていった。すると、野球部という組織とそこに所属する部員たちがどんどん活性化していった。生き生きしていった」
「確かに! みんな居場所ができたとたん、活躍するようになっていったね」
「そういう、人が生き生きする『居場所』を作るのが『マネジメント』なの。だからドラッカーは、競争社会で居場所をなくした人たちのために、『マネジメント』の知識を伝えようと思ってこの本を書いたんだって。一人でも多くの人に、生き生きとした居場所を作ってもらうために」
 夢は、真実が言った「居場所」という言葉に強く引きつけられた。その言葉に、心にポッと火の灯るような温かみを感じた。
 夢はこのとき、こう考えていた──。
(私も、真実に居場所を作ってもらった。だから学校に通えるようになったし、こうして高校にも来ることができた)
 そして、こう考えた。
(となると、私にとって真実は「マネージャー」なのかな? だって、私に居場所を与えてくれたから……)
 すると、そんな夢の思いを知ってか知らずか、真実はふいにこんなことを言い出した。
「だからね、私もマネージャーになろうと思って」
「えっ!」と夢は驚いた。「マネージャーって、何の?」
「決まってるじゃない! 野球部よ」
 それを聞き、夢は心の底から驚いた。そして、思わずこう叫んだ。
「でも、うちの高校には野球部がないじゃない!」(つづく)

(第3回は12月8日に公開予定です)