残ってほしい人ほど辞めていく、介護離職の深刻介護離職を余儀なくされるベテラン社員が今、徐々に増え始めています

「介護を理由に仕事を辞めたら、その後の人生はどうなってしまうのか?」

 そんな不安を抱えながら仕事をしている人が今、増えています。介護を行うために早く帰ることを申し出ると、「降格させられるかもしれない」「辞めさせられるかもしれない」と思っている人が少なくないからかもしれません。

 確かに、介護と仕事の両立をよく思わない職場もあるのでしょう。ただ、人手不足もあり、何とか職場に残ってもらおうと策を練っている会社も多いのが実情です。それでも介護離職を決断する人は増加し続けています。高齢化が一層すすむ日本で、仕事と介護の両立をさせることはできないのでしょうか。

 今回は、実際に介護を理由に離職した方の声を紹介しながら、介護離職の実態と問題点を考えてみたいと思います。

「何とか辞めないで働いてくれないか」
会社が引き止めても辞めていく介護離職者

 近年、家族の介護のために仕事を辞める人=介護離職が増えています。製造業の会社に勤務しているBさんは、父親が要介護の状態で、妻も入院中。介護施設に行くため会社を早退することが週に数回あります。同僚たちは「気にするな」と言ってくれますが、これから何年続くのかを考えると「精神的にもたない」と思い、退職を決意したようです。ただ、退職願を出したときに受けた上司からの引き止めは、半端ではないものでした。

「君のこれまでの経験は会社にとって貴重なもの。何とか辞めないで働く方法は考えられないのか」

 と、上司は説得を繰り返したようです。しかし、Bさんはすでに心が折れており、かつ介護に専念したいとの決断は変わりませんでした。Bさんは翌月には退職。父親の介護施設のそばで、バイトしながら生計を立てることにしました。