研究者への
大学からのすさまじい圧力

マコ 「ラストチャンスだから」と言ってつくった彼のニュースは、環境省から名指しで異議を唱えられました。でも、彼はその直後に「平気だよ」と言っていました。一般的に、メディアの方は比較的バッシングに慣れていると思うのですが、大学の研究者の方は違います。
 ネットで研究内容がバッシングされて、匿名の電話が大学にかかることもあります。学内での圧力は、相当なものですね。

広瀬 研究費がゼロになったり、研究が黙殺されたり、存在を無視されたりと、いろいろあります。一番卑劣なのは、人格否定の噂を広めるやり方です。

マコ 広瀬さんが先ほどおっしゃった松山の集会の2日前に、琉球大学の研究者、野原千代さんが病死しました。千代さんは、福島原発事故による被曝とヤマトシジミ(蝶)の関係について命がけで研究していました。この研究はすばらしく、山本太郎議員が国会での質問にも使っていました。

広瀬 私も読みました。琉球大学でも、彼女は圧力を受けていたのですか? 沖縄ですよ。

マコ 初めて彼女に会いにいったとき、論文の解説はするけれど、いろいろあって取材は受けられないから、私(マコ)が独自に論文を理解して記事にしたことにしてほしい、と言われました。

 亡くなった方々とのメールのやり取りを振り返って思うのですけれど、自死すると決めている人、余命が数ヵ月と知っている人が、本当に命がけで原発事故の被曝の問題を報道したり研究したりしていたんだなと、改めて思いました。

広瀬 短い命と知っての活動ですか。言葉もない。つらい話ですね。

マコ 野原千代さんの最後のフェイスブック投稿は、岡山大学の津田敏秀先生の会見のことでした。

広瀬 ダイヤモンド書籍オンライン連載第39回で紹介しましたが、岡山大学の津田敏秀先生が、2015年10月8日に東京都内にある日本外国特派員協会で記者会見して、

1986年に起きたチェルノブイリ原発事故のあとに甲状腺がんの発症が多発したケースが、福島に重なる事態は避けがたい

 と警告したことですか?

マコ そうです。「津田先生は、本当に率直、真っ正直な方です」と、フェイスブックに書いていました。フリーランスの記者で、東電の記者会見に通っていて亡くなった友人は、昨年12月31日に大阪のラジオで私たちが原発事故のことを話したことを、ツイッターで最後につぶやいてくれました。
 みなさん最期まで、原発事故のことを考えて亡くなられたんだなと思います。