クリエイティブな仕事においての
「自工程完結」とは

 「自工程完結」とは、文字通りに読めば、自分の工程で仕事を完結させることだが、そのエッセンスは「プロセス/手順」を徹底的に洗い出して見直した上で、標準化することにある。

 もともと「自工程完結」は、車内の水漏れ対策から発展した取り組みだった。水漏れは、それぞれのプロセスでチェックするのではなく、最後に一度にまとめてチェックするため、問題の原因を突き止めるのが非常に難しい。

 そこで著者は、車体、塗装、組み立てなど、各部門に協力してもらって、水漏れの原因が想定される作業をすべて洗い出していった。その数二〇〇〇というから驚きだが、その一つひとつを精査し、各部門でカイゼンを重ねた結果、水漏れゼロが実現できたという。

 つまり、工場の全工程を貫く課題に対して、それぞれの工程で不良を出さないような体制をつくりあげることが、「自工程完結」の出発点だったということだ。

 ならば、ホワイトカラーで「工程」に当たるものは何か。著者は「意思決定」だと喝破する。

〈資料作りであれ、企画であれ、営業であれ、何かのアウトプットを出していく途中には、いくつもの「意思決定」が存在しています。「意思決定」が積み重なって、最終的なアウトプットは出てきているはずなのです〉

 この考えにもとづいて、著者はスタッフ部門における「自工程完結」のポイントを紹介しているが、ここでも重要なのは、プロセス/手順を洗い出し、その必然性を精査することだ。

 しかし、次のように思う人もいるかもしれない。ホワイトカラーの仕事は多種多様だ。殊に、企画や開発などクリエイティブ系の仕事を標準化することは難しいのではないか、と。実際、社内からも「マニュアル人間を作るつもりか」という不満の声が上がったという。

 こうした不満に対する著者の応答を綴ったくだりは、本書の山場の一つだろう。