まずは相手に対する役割期待を考えてみよう

 部下を見て、「どうして自分のようにできないのだろう?」という不満を抱くことは多いと思います。それ以外にも、様々な不満を感じてしまうこともあるでしょう。

 ここまでは普通の話です。

 ただ、「役割期待」という概念を持ってくると、どうなるでしょうか?

 例えば、「いつも遅刻ばかりで時間にだらしがない!」という不満は、「定時に出勤してほしい」という役割期待が満たされていない、ということになります。

 すると、叱るのではなく、「どうすれば定時に出勤できるのか」という話し合いをすることができます。

 もしかしたら睡眠障害を持っていて、治療が必要なのかもしれません。

 あるいは、「注意の障害」(1つのことにしか注意を向けられない人)を持っていて、ついつい余計なことに気が散った結果、遅刻してしまうのかもしれません。

 本人が仕事の成果重視主義で、「成果さえ上げればいいだろう」と、遅刻そのものをあまり問題視していない可能性もあります。

 このあたりを一対一で話せば、事情はかなりわかってくるでしょう。

「お前は何で時間にだらしないんだ!」と叱られるよりも、「どういうふうにすれば定時に出勤できるだろう」「どうしても定時の出勤が無理だったら、働き方の全体を、一度みんなと話し合った方がいいな」と話したりする方が、成果が多そうですね。

 このケースの場合、役割期待は「定時に出勤すること」から、「一定以上の成果を上げること」へと変わります。

 あるいは「遅刻分の残業は必ずすること」に変化させることもできるわけです。この方が、ただ毎日「また遅刻か!」と怒っているよりも、ずっとストレスが少ないでしょう。

 しかし、これらをきちんと交渉して正確に伝えるには、やはり直接的な言葉が必要です。