現行では事実上、禁止されている
介護サービス料金の自由化

 高齢者世帯の一人当たり所得は195万円と、全世帯平均の208万円と大差はない(厚生労働省「国民生活基礎調査〈平成24年〉」)。過去の高い成長期に財産を蓄えた、団塊の世代の高齢者が増える一方で、貧しい年金収入者も少なくない。高齢者は、所得や資産の格差がもっとも大きな年齢層である。それにもかかわらず「高齢者は一律に貧しく画一的な保護が不可欠」という過去のイメージに囚われていることが、介護保険の基本的なジレンマを生む主たる要因である。仮に平均的な所得水準以上の高齢者に、より多くの介護サービスを自発的に購入してもらえば、介護報酬の一律的な引き上げなしに、介護事業者の採算性の向上と介護労働者の賃金増が実現できる。

 介護保険では、要介護認定にもとづき、一定の介護サービスが支給される。これに利用者は、自ら費用を支払う保険外の介護サービスと併用することはすでに容認されている。例えば週2回の身体介護を週3回に増やすことや、家事支援等、追加的なサービスとの組み合わせである。しかし、これだけで「混合介護」が、すでに実現しているというのは誤解である。

 介護保険外サービスは、そのコストが高いこともあり、必ずしも幅広く活用されていない。他方、例えば通常の介護報酬の2割程度の割増料金で、質の高いサービスを購入することができれば、その潜在的なニーズは大きい。しかし、こうした介護サービスの市場価格の自由化は、行政により、事実上、禁止されている。

 現状では、介護サービスの事業者に対して、介護報酬で定められた単価が、事実上のサービス価格の上限と解釈されている。この法令上の根拠としては、事業者は介護保険で定められた単価よりも低い価格で介護サービスを提供できるという規定がある(介護保険法41条)。このように、単に割引が可能という現行規定が、たとえ質の高いサービスでも、保険単価よりも高い価格設定禁止の根拠にするという「反対解釈」がまかり通っている。まさに「(行政により)明確に許可されないものはすべて禁止」の福祉の世界のままである。これではせっかく介護の世界に企業の参入を認めたにもかかわらず、その創意や工夫を発揮できる余地は限られている。