さらに苦しんでいる
「親子二人暮らし世帯」の現実

――高齢者の一人暮らし世帯で貧困率が比較的高いというのは良く知られた話ではありますが、一方で親子二人暮らし世帯の困窮についても触れていますね。

 75歳以上の高齢者を含む二人世帯について、港区で全数調査をしたところ、うち2割が親子世帯であることが判明しました。何らかの理由で子どもに収入がなくて親の年金を頼りに暮らしていたり、親の介護のために同居しているケースです。

 そして、実はこの「高齢者を含む親子二人世帯」の貧困も非常に深刻です。12月に入ってからも東京都中野区の住宅で、80代の母親と50代の息子の遺体が見つかったというニュースが出ていました。また、埼玉県深谷市在住の70代、80代の夫婦と、40代の娘が軽自動車ごと利根川に突っ込み、心中を図った事件も大きく報道されました。こうした世帯では、貧困に加えて介護問題も深刻にのしかかっています。

 また、親の年金がないと生きて行けない、無収入の子どもたちが引き起こす「所在不明高齢者問題」もクローズアップされていますね。親が亡くなっても、生きていることにして年金をもらい続ける子どもたちがいるのです。厚生労働省は10年、所在不明者が全国に100歳以上で271人、80歳以上で800人いると発表しました。

――高齢者の貧困問題を語るとき、必ず「孤独」というキーワードが登場します。なぜ日本には、これほどまでに孤独に苦しむ高齢者が多いのでしょうか?

 幾つもの理由がありますが、まず大前提として私は「貧困が孤独を招く」と考えています。1980年代の少し古いデータなのですが、生活保護世帯の交際費は、一般勤労世帯のおよそ4分の1に過ぎない、という数字があります。交際費が出せずに冠婚葬祭を欠席すれば、親族や友人・知人との関係は疎遠になっていきますよね。さらに飲み代など、人に会うためにかかるお金も削っていることでしょう。

 貧困を加速させたのは、2000年の介護保険制度の導入だと考えています。なぜなら、介護保険は利用したい民間業者を自分で選ばなければなりませんが、本当に困窮している人は、どうしたらいいのか途方に暮れているような状態で、とてもではないけれど、自分で主体的に情報を集めて選べるような環境にはない。こうした人たちに必要なのは福祉サービスです。

 実際、日本で介護保険制度を利用している65歳以上の高齢者は1割半程度です。残り8割以上の中に貧困と孤立問題に苦しむ人たちが数多く含まれているのです。にもかかわらず、介護保険を中心に社会保険制度が肥大化をして、福祉サービスがどんどん削られている。

 また、福祉サービスが縮小する中で、行政が高齢者の状況を把握し切れなくなっている点も大問題ですね。港区では11年から「ふれあい相談員」事業を始めました。これは、困窮状態にありながら、制度利用につながっていない人たちに対して、行政側が訪問して情報を聞き取ったり、必要なサービスにつなげる取り組みです。こうした取り組みを全国的に行う必要があります。