経営×ソーシャル
ソーシャル グローバルトレンド
【第2回】 2015年12月22日
著者・コラム紹介 バックナンバー
武邑光裕 [クオン株式会社 ベルリン支局長]

ソーセージの本場ドイツが
“ベジタリアン料理の新首都”になっていた!

ソーシャル×食
オンライン料理キット宅配ビジネスの隆盛

KptnCookのレシピ画面。気に入った料理の食材キットが入手できる

 欧州のソーシャル起業家たちにとって、食のプラットフォーム・ビジネスの構築は、今や最大のトレンドとなっています。

 2014年に創業したベルリンのスタートアップKptnCookは、「30分以内で美味しい食事を調理しよう」をスローガンに、料理ブロガーが考案した1日3種類のレシピ(24時間で更新)をユーザーのスマホに届けるもので、気に入った料理があれば食材キットを購入、自宅への配達も可能です。ドイツ国内に13店舗を持つKochhausは、実店舗とオンラインで独自のレシピにもとづく料理キットを販売しています。ベルリン本社のHelloFreshは、米国、英国、ドイツ、オランダ、オーストリア、オーストラリアの6ヵ国の市場で、オンライン注文による料理キット宅配で知られています。オンラインでレシピを選び、ベルリン中の点在している引取ステーションに、料理食材の入った袋を取りに行くhome eat homeも人気です。

 こうしたオンライン料理キット宅配ビジネスは、今や世界中に競合乱立しています。ユーザーのスマホと直接つながった「食」は、まずアプリとしての完成度(クールなレシピ・コンテント、調理という創造性の喚起など)でユーザーの心をとらえ、ユーザーはそのコンテントから料理の品質を想像します。

 重要なのは、ユーザーの多様な食への志向にフィットし、かつ明快なレシピ開発と高品質な食材の調達であり、何より、自分で調理したいという創造性の刺激、そして宅配までのロジスティクス、最後に価格も決め手となります。ベルリンだけでも10社ほどの料理キット宅配サービスがありますが、それぞれに個性ある食へのこだわりを持っていることから、日によって各社のサービスを使い分けているユーザーもいます。

 いくつものスタートアップが、多様化する「食コミュニティ」の市場に焦点を定めます。その活況は、ここベルリンでは停滞する気配がありません。

グローバル×食
新興国オンライン食品市場の開拓

 一方、ハイテク大企業にとっては、世界各地の新興国の食市場もターゲットとなります。ベルリンの大手インキュベーター企業であるROCKETINTERNETは、主に米国で成功したAmazonやAirbnbなど、いくつもの成功ビジネスモデルをコピーして、欧州やアジア、新興国で展開し、それらを成長させては、売却し利益を上げるというビジネスを展開しています。

 彼らは、食ビジネスで成功したアメリカのレストラン宅配サービスgrubHubを真似たと思われるfoodpandaを2012年に立ち上げました。経済成長を続ける新興国では、食の宅配需要が急速に拡大しています。現在foodpandaは、中東やアジアの新興市場を中心としたオンライン食品注文マーケットプレイスとして、世界500以上の都市と、3万8000のレストランと提携し、個人の家から法人顧客などに、地域のレストランからの食事を運んでいます。

 コピーキャット・ビジネスモデル(先行する成功企業のビジネスモデルを模倣し、さらに洗練したビジネスに仕上げる)には、批判の声も聞かれますが、オリジナルのビジネスよりも洗練されたモバイルアプリ技術や大資本の投下によって、よりグローバルな市場でビジネスが拡張されていきます。世界各地の新興市場に向けた食ビジネスが、ベルリンという場所から展開されていることは驚きです。

武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

「ソーシャル グローバルトレンド」

⇒バックナンバー一覧