売り手も買い手も
様子見が続く住宅市場

「新築マンションは、何期かに期分けして時間をかけて売ることが多い。今はデベロッパーも、購入者側も、様子見している状況です。期分けの分譲時期を先送りする、あるいは各期の分譲戸数を小さく抑えて細かく売るという傾向が見られます」(不動産経済研究所主任研究員・松田忠司氏)

 実は14年も、首都圏新築マンションの販売戸数は抑え目で推移していたのだが、12月に一挙に伸びた。これは予定していた分譲戸数の未消化分を、年末に調整したためと見られる。

 しかし、15年の年末には同じことが起こらない可能性が高い。10月に起きた傾斜マンション問題の余波と、マンション価格上昇の影響から、客足が鈍るのではないかと、デベロッパーが様子見の姿勢を強めているからだ。

「用地不足と、建築資材や人件費のコスト高から、価格上昇が起きていることに加えて、デベロッパーが『売れないものはつくらなくなった』ことが大きく響いています」(みずほ証券経営調査部上級研究員・石澤卓志氏)

 今、マンション市場を動かしているプレーヤーは、財閥系、電鉄系、商社系など、財務基盤が安定した大手企業ばかり。マンション商戦自体が各物件を「売り急ぐ」より、確実に「利益を出す」ビジネスモデルに変わってきている。

 一般に、デベロッパーが用地を取得して設計を行い、建築確認申請が下りてからが販売期間となる。そこから竣工までの間に売るのが、いわゆる「青田売り」になるが、その期間は約1~3年と長い。さらに竣工済み物件を気長に売るデベロッパーもある。

 販売開始時期を延ばして、購入意欲のある客が「たまるのを待つ」のはよくある販売戦略だ。

「多少値上がり傾向にあっても、物件がどんどん出てくれば、買い手は価格比較がしやすく、動きやすいのですが、値上がり傾向に加え分譲が減っていると難しいですね。売り手側からすればコスト高で、これ以上値を下げようがない。ダブル様子見傾向は16年も続くと見られます」(松田氏)

 放っておくと、どんどん買いにくくなりそうだ。いっそ「買わない」という選択肢を検討する人も、増えてくるかもしれない。

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この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2016年1月17日号『2016年新春 住宅購入 最新事情』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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