欧州経済危機には軍事的帰結がある。欧州の軍事関連企業の株価には、早くもその兆しが表れつつある。

欧州危機が招く欧州各国の軍事費削減

 世界中が挙げてEuro-skeptic(欧州懐疑論者)となり、Euro-pessimist(欧州悲観論者)となった今、欧州各国はいやがおうにも歳出カットを進めるほかない。軍事予算も当然ながら聖域たり得ない。

 先進経済各国を同時に襲った累積債務危機とは、軍事予算を減らし、軍需市場を奪う。軍事関連企業には、落ち込む需要をどこかで補おうとする強い誘因を生む。

 売れなくなった武器を欧州企業から買う余力のある国とはどこか。インド、ブラジルだろうが、どこよりも中国だ。世界最大の武器輸入国だからである。

 対中武器輸出の自粛は欧州各国において、1989年天安門事件以来渋々とではあれ続いている。米国と、日本の圧力は、これを続けさせた少なくとも一因だった。

 欧州軍需産業は、この拘束衣を振り払おうと政治に圧力を加えるだろう。中国を市場経済の国と認定することが、そのため重要な一里塚になる。まずはこれを欧州内で実現させ、対中武器輸出の解禁をもたらすべく、盛んなロビイングを始めるのではないか。

中国など新興国への武器輸出が加速する危険性

 欧州系軍需関連企業において、大株主には政府が名を連ねる。緊縮財政下の各国政府が、業績不振に陥る各社をどうしようとするか。無配や低配当の状態を我慢できるのか、あるいは一層の集約を志向するのか。それとも株式を手放そうとするだろうか。

 いずれにもせよ、売れる先には武器を売るべしという動機は政府の側にも強く働く。

 欧州と、恐らくやがては米国から、新興経済勢力への軍事関連輸出の増大、その結果としての軍拡――それらが、欧州経済危機の軍事的帰結となるのではあるまいか。