フィリピン 2015年12月18日

空港での「銃弾所持事件」で見るフィリピンの汚職事情

マニラ空港で相次いで発生した銃弾所持事件。空港警察の発表では銃弾押収数は昨年の5倍以上という。この背景にあるフィリピン独特の事情とは? 元・フィリピン退職庁(PRA)ジャ パンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住19年の志賀さんが、その現況をレポートします。

 年末のマニラを騒がせたのが、空港での銃弾所持事件だ。多くの旅行者が銃弾を保持していたとして空港で逮捕、送検された。旅行者ばかりではなく、出迎えに来た人まで手荷物検査で銃弾が発見され捕まった。

 といっても、これはテロとはなんの関係もない。フィリピンでは銃弾はお守り代わりで、ほとんどの人が常時所持しているのだ(銃そのものを持ち歩いているわけではない)。

 空港の手荷物検査でナイフなどが見つかっても没収されるだけだが、銃弾となると、悪質とみなされれば送検される。たとえ送検を免れても数時間の足止めを食らい、旅行が続けられなくなって大迷惑だ。

 私も、息子からプレゼントされた小さめのアーミーナイフを常にポシェットに入れていたが、そのまま飛行機に乗ろうとして検査に引っかかってしまった。離れたところに連れて行かれてポシェットの中を開けるよう要求され、アーミーナイフが出てきた。

 その時、頭をよぎったのが、お金を渡して見逃してもらう手だ。1万円はする代物だから500ペソ(約1200円)くらい払っても痛くないと思ったものの、躊躇している間に没収されてしまった。そのあと仕事の相棒のジェーンに相談したら、すぐに件の空港職員を呼びつけて探すよう指示し、500ペソ支払って返してもらった。

 だいぶ前には爪切りをとがめられて500ペソ支払ったことがある。この爪きりは20年くらい使っているドイツ製の逸品で、私の宝物の一つだったのだ。

ターミナルの外は旅行客および出迎え人でごった返す【撮影/志賀和民】

 手荷物検査で危険物が出てきた場合、それを見逃す代わりに金銭を要求するのは日常茶飯事で、空港検査員の貴重な収入源だ。そのため、銃弾を旅行者のカバンに忍び込ませて、それを荷物検査で発見し金銭を要求するマッチ・ポンプの疑いが庶民の間に広がった。

 空港警察と空港職員がぐるになっての犯行ということで、空港職員と警察の権威が失墜し、話は大統領まで上っていった。この事態に司法省が検事を送り込んだり、事件の再発を防止するために大幅な空港警察の増強が行なわれた。

ターミナルを巡回する警察官はどういうわけか若手で、悪しき風習に染まっていない若者を起用しているようだ【撮影/志賀和民】

 しかし、空港警察員が増えたら増えたで庶民はさらに恐れをなすという悪循環となり、空港職員は自らの無実を訴えて集会を行ない、大統領はフィリピンの空港は安全だと宣言して観光客の減少を食い止めようとしている。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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