テンションが上がる並べ方「面陳する」

 特に好きな本や、いいなと思う本は面陳(めんちん)にしています。書店ではないのでさすがに平台はなく、そこに平積み、なんてことはできません。でも、本のカバーデザインが目に飛び込んでくる面陳の威力は絶大です。カバーは本の顔。

 日本の「紙の本」の価値の、半分はここにあります。同じ本の各国版を比べてみれば一目瞭然(*5)。日本の本の装丁の美しさ、カバーデザインの素晴らしさがわかります。

 SFでいえばイラストレーター加藤直之のカバーは、衝撃的でした。そのカバーイラストだけで、その本の持つ世界が語られ、その世界観に取り込まれていく気がしました。『星を継ぐもの』に始まり、『宇宙の戦士』『終りなき戦い』としばらくは彼のデザインというだけで本を買ってしまうほど……。

 75cm幅の本棚一段には、40冊ほど入ります。面陳するとは、その40冊の中で「私が今、一番気に入っている本はこれ!」を1冊だけ選ぶこと。それを、数冊分の場所をわざわざとって示すことです。そのジャンルでの私的ベスト本の選択・陳列作業といってもいいでしょう。その作業自体が、自分が読んだ本の振り返りになり、内容を思い出す助けになります。

三谷宏治氏の書斎大公開!<br />本の開架、分類、面陳まで、<br />知をオープン化する書斎術

 ときどきは何を面陳するか、考えましょう。本が増えてスペースがなくなってきたら、縦にしないといけなくなりますが、今のところ棚一段に1冊は面陳されています。面陳できなくなったときが、本棚増築(もしくは、次のイス取り合戦)のタイミングです(笑)

スペースを生み出すための並べ方「イス取り合戦」

 わが家にはあと数本分の本棚増設余地がありますが、私の本(やマンガ)が書斎から離れると「開架」の意味が薄れるので、本の数を絞る努力もしています。それがジャンル別の勝ち抜き戦です。どんな本でも、読み終わったらその本の所蔵方針を考えます。

(1) 永久保存版:本棚の所定位置で面陳(最近だとSF『火星の人』)
(2) 開架本:本棚の所定位置で縦に置く
(3) 閉架本:福井の実家の自分の部屋に箱で置く
(4) おさらば本:捨てるか、寄付(NPO法人(*6)などに)に回す

 最近は、幸か不幸か(4)が結構多いので、読んだ分だけ蔵書が増えることにはなりません。それでも手元に置きたい、(1)(2)が2~3割はあるわけで、そうなると毎年20~30冊(棚半分か1段分)を、新たに開架する必要性が出てきます。

 本棚がいっぱいなら、(1)(2)で増える分と同数だけ、既存の本を捨てなくてはなりません。でも、本を捨てるなんて……。

 子どもの頃、「本はずっととっておくもの」でした。きれいに読んで、きれいにしまう。それはとても私的な手紙のようでした。ただ、背に腹は替えられません。本たちに、生き残りを賭けた「イス取り合戦」をしてもらいましょう。

 同じジャンルや棚位置のもので、新しい古い関係なくのイス取り合戦です。ビジネス系なら、一番耳が折れていない、線の1本も引かれていない本を選んで、それとの比較です。棚から出す本で、必要な部分はコピーをするのもいいでしょう。

 非ビジネス系なら、もう感覚しかありません。直感で決めましょう。手にとったときの「トキメキ」で決めるのもいいでしょう。ただどんな本だったっけな、と読み始めたら終わりです。きっと捨てられなくなるか、作業が進まなくなって時間切れになってしまいます。スパッといきましょう。段ごと分類と段ごと面陳、それにイス取り合戦。わかりやすく、かつ刺激的な本棚をつくりましょう!

 さて、ここまでで新刊『戦略読書』の紹介は終わりです。本好きのあなた、また何か読みたくなりましたか?RPMをつくってみましたか?書斎コーナー是非つくりましょう。
 この『戦略読書』の目的は、

(1)読者諸氏が自らの読書に「戦略」を持ち込み
(2)そこでスキルと経験を効率よく得て、自己を改造し
(3)量産機(コモディティ)にならず、オリジナリティのある存在(シャア・アズナブルの赤ザクなど量産機改造型試作機)になること(詳しくはダイヤモンド・オンラインのこちらを)

でした。もちろんこの本を1冊読んだだけでそれらが実現されるわけではなく、ここからどれだけ「新しい読書」が展開されていくかが勝負です。

 なので、書籍紹介を主とする4章や付録以外でも、多くの本やマンガが本文中に紛れ込んでいます。心に引っかかった本は、騙されたと思って読んでみてください。きっと期待は裏切りません。

 そうやって、楽しみながら1・2章を実践することで(1)「読書の戦略化」が、3章を試みることで(2)「スキル・経験獲得」が実現されるでしょう。そして、(3)に向かっては、(1)(2)の継続あるのみ。2年後、3年後、みなさんからの実現報告を、待っています。(連載終了)

*1 飲みにいくのは週1回弱。早く帰ると「娘たちが駅までお迎え」という特典があった。
*2 CDからPCでMP3化してホームサーバーに保管。これを家中で再生できるようにしてある。書斎のPC音楽ソフトでは出力プラグインにWASAPIを利用し、USBオーディオプロセッサを介してアンプにつなげている。
*3 電車内など移動中の読書用。スマートフォンの魔力ともいえる。
*4 一部、叔父さん(私)の本コーナーもある。
*5 『ハリー・ポッター』シリーズ著者のJ・K・ローリングも「日本語版の装丁が一番好き!」と。
*6 NPO法人3keysなどは、古本を宅配便で送るとその売上高が寄付になる仕組みをつくっている。ただし書き込み等は不可。