日本の衰退と、
中国による「アジア共同体」の形成

(3)  ヨーロッパのように、民主的に平和を維持する地域秩序が構築される。ただしこれは中国の政治的自由化が前提条件となる。

……この東アジア共同体ともいうべき地域秩序は、小国の自治を尊重する。多元的で平和を愛する東アジア共同体は、安全保障の要としてアメリカの助けを必要とする。現在、強い中国への不安が高まっていることを考えると、これは最も現実味の乏しいシナリオだ。

(4) 中国が頂点に立つ中国中心の地域秩序が構築される。1990年代以降、アジアは開放的な環太平洋地域機構の構築を目指してきたが、これはあくまでアジアのなかにこもる閉鎖的な地域機構になる。

……このシナリオは、中国が好戦的な姿勢を改め、近隣諸国と次々に2国間関係を築くことが前提になる。

インドが台頭するか、日本の相対的衰退が止まらなければ、中国中心の秩序が生まれる可能性は高まる。アジアの中核的パートナー諸国に中国に対抗する能力や意志がなければ、アメリカが関与しなければならないかもしれない。それは中国との直接対決の危険性をはらんでいる。

アメリカがアジアにコミットするかどうかは不透明だが、それを別にすれば、アジアにとって最大の不確定要因は、中国自身の弱点がどのように発展するかだ。たとえ中所得国の罠にはまり、先進国経済に脱皮できなかったとしても、中国はアジアでトップクラスの国であり続けるだろう。

しかしその影響力は低下する。そうなれば中国指導部は、大衆の目を国内の問題からそらすために対外的に攻撃的な姿勢を強めるおそれがある。中国が近隣国かアメリカと戦って敗れた場合も、中国政府は面目を失うことになる。他方、勝利すれば、中国中心秩序が構築される可能性が高まるだろう。

 

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