陰影法の頂点とも言うべき技法が、スフマート。
究極のグラデーション

こやま 肖像画じゃなかったんですか?

山田 もともとは肖像画として描き始めたんだろうけど、ジョコンド夫人には買い取られずにダ・ヴィンチが生涯持ち歩き、加筆を繰り返すなかで別の作品になっていった。

こやま あ、そうか。持ち歩いて、少しずつ直していったという……。

山田 その結果、こんな微妙な表情になったわけです。
そして、『モナ・リザ』が名画と呼ばれる理由のひとつは、まさにこのモワッとした表情にあるんですよ。これ、ちょっと拡大してみましょうか。

ダ・ヴィンチの愛人は<br />小悪魔ダメンズ!?
 

山田 ほら、見てください、どんなに拡大しても色の境目が特定できない。つまり、グラデーションが半端なくなめらかなんです。

こやま ホントだ。そこが技術的にスゴイってことですね!

山田 この陰になった部分でも、どこからがまぶたの線なのかわからない。つまり輪郭線がないんですよ。

こやま 写真みたいですねー。

山田 ある意味、写真以上だと思いますよ。これがスフマートという技法です。イタリア語で「煙らせる」っていう意味ですね。
西洋絵画の二大要素は遠近法と陰影法って言ったでしょう。その陰影法の頂点とも言うべき技法が、スフマート。究極のグラデーションとも言えるでしょう。これは油絵の具の登場によって確立した技法なんです。