「都市」化が
宗教的アイデンティティを強める理由

ピューの調査では、多くの国で道徳的・文化的な優越意識が見られた。2013年の調査では、アメリカ、東ヨーロッパ、そしてアフリカとアジアと中米のほとんどで、回答者の半分以上が、自国の文化はよその国の文化よりも優れていると考えていた。

この意識は特に途上国で強い。インドネシアと韓国では回答者の90%が、インドでは80%以上が、自国の文化の優位を信じている。一方、サハラ以南のアフリカなど途上国と脆弱な国の多くでは、資源の欠乏や気候変動の結果、部族や民族間の対立が激しくなるなど、アイデンティティによる分断が顕著になっている。

部族、民族、宗教、国籍の間でもともと存在した緊張が、資源の奪い合いによって悪化すると、イデオロギーの影響力が高まり、社会を崩壊させるおそれがある。

宗教的アイデンティティが強まった背景には人口の都市化がある。農村部の住民にとって、都市への移住は生活を改善する手っ取り早い方法だ。ヨーロッパとロシアでは、こうした移住者の多くはイスラム教徒で、移住後も宗教との結びつきが強い。

人口の都市化は、宗教団体が提供する社会サービスの需要を高める。イスラム教やキリスト教の団体は、こうした活動を通じて結束と影響力を強めてきた。

こうした移住者も中間層として同じような関心や懸念を持つようになれば、宗教による対立の一部は解消されるだろう。2012年にEUが世界の中間層を調べたところ、「5人に4人が、現実的な統治システムとして民主主義が最も優れていると考えている」ことがわかった。

2009年にピューの調査では、世界13カ国(チリ、ウクライナ、ロシア、ベネズエラ、ポーランド、南アフリカ、マレーシア、メキシコ、ブラジル、エジプト、アルゼンチン、インド、ブルガリア)の中間層が個人の自由を重視するようになり、男女差別に対する意識が高まっていることがわかった。

 

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