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ロック板なしのコイン式駐車場を開発
生来の“機械好き”が追求する顧客目線
アイテック社長 一ノ瀬啓介

週刊ダイヤモンド編集部
【第113回】 2010年6月14日
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アイテック社長 一ノ瀬啓介(撮影:宇佐見利明)

 東京・新橋にあるコイン式駐車場。クルマを止めて降りたドライバーがちょっとけげんな顔になる。車両の下で昇降するロック板が見当たらないからだ。

 「当駐車場はお客様の安心・安全を第一に考えロック板はありません」──。駐車場奥に掲げた看板の説明を読んで、初めて納得顔になる。

 秘密は、ポールに内蔵されたカメラによる車両ナンバーの把握にある。埋設されたセンサーでクルマの入出庫を検知、インターネット回線を通じて、ナンバー情報と画像をデータセンターで管理しているのだ。

 この機器の開発・販売とデータセンターの運営を手がけるのがアイテックだ。社長の一ノ瀬啓介が1997年に起業した。

 一ノ瀬は根っからの機械好き。子どもの頃は模型づくりに没頭、中学ではラジオ製作に精を出す。「今でいうとオタクみたいな感じだった」と笑う。大学で電子工学を学んだのも、その延長線上といえた。

 卒業したのは72年。東京オリンピック、大阪万博と一大イベントを経た日本が、今の中国のように経済大国としての道を突き進んでいた時期だった。

事業撤退を機に独立
虫食いの土地が生んだ新たなビジネスチャンス

 大手精密機械メーカーに就職した一ノ瀬が最初に配属されたのは電卓部門だったが、価格競争に敗れ、1年後に撤退。次に移ったシステム部門では、外販用の工場の生産管理ソフトやハードの設計、開発に携わった。その後、プリンタ部門に異動し、LSIの設計に当たる。

 朝から晩まで働き詰めの日々だったが、充実感はあった。「子どもの頃に模型を作ったのと同じ。違うのは、給料をもらってモノづくりをさせてもらったこと」と振り返る。

 そんなとき、転機が訪れる。再び価格競争でプリンタ事業の撤退が決まったのだ。時は94年、円高で競争力が失われ、バブル崩壊で国内の有力企業といえども荒波に抗えなくなっていた。会社は希望退職を募り、一ノ瀬は手を挙げることに決めた。

 常々、「定年のない仕事をしたい」と思っており、妻も働いていたため、「辞めてもなんとかなる」と決断を後押しした。

 さすがに失業保険も切れて不安になった頃、駐車場経営を始める友人に、たまたま機器を見せてもらった。「これなら自分にもできるかもしれない」。機械好きの虫がうずき出した。

 早速、個人創業し、駐車場機器メーカーからの受託開発などを手がけた。当時は外食店などで用いるゲート式の大規模用途が主流だったが、狭小の土地を活用したロック板によるコイン式駐車場が急速に増えていた。地上げの途中で放置された虫食いの土地から、新たなビジネスが生まれようとしていたのだ。

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