一発ヒットがあれば生きていける

山田 だからバチカンからも声がかからなかったんじゃないかと。

こやま そりゃそうだわ。バチカンが正しい!

山田 ラファエロみたいに工房を経営して弟子に任せればよかったのに、それもしたくなかったんだろうね。才能よりルックス優先で弟子を選んでるから、任せようにも任せられなかっただろうし。

こやま 弟子も育たず。好き勝手にやってた人なんですかね。

山田ある意味、生粋のアーティストなんですよ。画家が職人だったこの時代に、ここまでアーティストな人は、なかなかいない。そんなことやってたら、普通は食っていけなくなりますから。
だけどなんだかんだ言って食っていけてたんだから、やっぱりダ・ヴィンチは誰もが才能を認めざるを得ないほどスゴイ人だったんですよ。

こやま 納品しないのに。

山田 前払い金もらっときながら納品しないんだから、一種のですよ。でも、そんな人でも一発ヒットがあれば生きていける。

こやま でも、『モナ・リザ』は、
生きてる間は売れなかったわけですよね?

山田 生前のヒット作としては、『最後の晩餐』があった。ボロボロはがれてくるけどスゴイ作品だぞ、と。じゃ、はがれないのを描いたらもっとスゴイんじゃないか、みたいな期待があったとか。

こやま でも描かなかったわけですよね。

山田いや、描いてはいるんですよ。
納期や代金でもめたり、頼まれてもいないチャレンジが失敗したりして、完成できないことが多かっただけで。逆に『岩窟の聖母』のように、もめたおかげで同じ画題の作品を2枚、完成させることになったケースもあるけど。現在はルーヴルとロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されてます。
 

『最後の晩餐』は、なぜボロッボロなのか?『岩窟の聖母』1483-1486年 ルーヴル美術館、パリ
『最後の晩餐』は、なぜボロッボロなのか?『岩窟の聖母』1495-1508年 ナショナルギャラリー、ロンドン