アートではなく課題解決のための
デザインが求められる

 90年代初めまで、商業分野でも、デザイナーに求められていたのは、作家性を強く押し出した、空間の個性を重視したデザインだった。その後のリーマンショックなどで、店舗の出店が鈍るなか、経営者のデザインに対する姿勢が変わり、デザイナーにはアートだけではなく、より課題解決を含むデザインを求めるようになったという。

「ひと言でいえば、今は編集型のデザインが主流になっています。良いものを取り入れて編集し、購買に結びつけられるデザインを打ち出して行く。私自身もデザイナーがアート的な手法にのみ傾倒していくことには否定的で、空間デザイナーは事業のうつわである本質とブランド哲学を表現する個性がバランス良くともなっているべきだと考え、本当のアートが必要な場合は、アーティストと協働を行うことも多い。そのパフォーマンスを最大化してゆく中で、事業主の課題を解決しながらオリジナリティを発揮できれば良いと考えています」

 緻密な調査と分析を行い、クライアントの課題解決を行う店舗づくりを考案してゆく。丹青社の商業分野における仕事は、こうした地道な作業の積み重ねの上に成り立っている。